過去の夢って怖いな
色の濃い縦線が入った青い目でチョコ色の髪をした幼い少年は椅子の上に立ち柵にに手をかけ背伸びをしてベットの中を覗く。中にいる赤子のクリクリとした目が少年の目を見つめた。
すると後ろから身長よりも長く引きずってしまっていたマフラーを母親が少年に巻き直し頭を優しく撫でた。
「もう五歳のお兄ちゃんなんだから優しくしてあげてね、虐められないように」
「ドラゴンじゃなくても虐められるの?」
「人間も同じなんだよ」
少年は赤子に目線を戻すと言った。
「でも、かくらんは狐だよ?」
母親は少年の頭を撫で、嬉しそうに微笑みかけた。少年がまだ人間かティーアンかも分からない弟がティーアンだと良いという望みを言ったものだと思っていたのだろう。
赤子は伸びてきた少年の手を握り楽しそうに笑った。少年もそれに答えるように嬉しそうに微笑んだ。
うっすらと目を開けたルウブは周りの光景を確認した。歪んだ風景が広がっていた。青空に民家らしきものが立ち並んでいる。
「また、外面はあんなにも冷たいのになぁ。内面はカクランの面みたいだな」
前を見るとメランが立っていた。髪型はそのままだが目の縦線は片方にしか入っていない。
「てめぇに入られた時点で死ぬのかと思ってたんだけどな」
「まさか、俺を病原菌だとでも言いたいのか? 魂は魂で実態があるんだからな」
「即死剤だろ。気色悪い」
意識の底に沈めこまれる前の出来事を思い出し口元を袖で拭う。
「それで? お母さんの言う通り守ってるつもりなのかな?」
メランが嘲笑うのをルウブは睨みつけていた。
あいつ、オレの見てた夢まで見やがって。よりによって何で何十年も昔の夢なんて。
「さて、君の前は決まってるからどうする? このまま俺と戦い続けて衰弱死。それとも周りを気にして俺にさっさと喰われてこの身体をよこすか」
衰弱死? そうか……オレ自身は自分の身体にいるんだから起きてる時と同じ状態か。けど、ここでなら寒さは感じねぇみてぇだな。
ルウブは槍の持ち手を取り出し邪魔なマフラーと上着を脱ぎ捨てた。
メランはルウブが槍を出し向かってくるのだと思い、周りに黒い影を出現させた。
ルウブは槍を出しメランへと向かっていった。
カクランは病室で翌日までうたた寝をしているところをインコに突かれ目を覚ます。ほぼ一日中寝ていたお陰か頭が少しスッキリしていた。
これって、ディナの……。
「君がルウブの弟君か」
顔を上げると白髪の青年が立っていた。
「……さすがに俺が持ち場を離れた事を知ったら怒るだろうなぁ。言わないでくれよ?」
移動塔を無理やり使用して来たせいか、気温の差を考えず厚着をしていて苦しそうだった。
「しばらく待っててくれる? 俺じゃあルウブ運べないし。君、寝不足でしょ?」
カクランは目をそらす。
それをルナールは顔色一つ変えずに見ると病室から出ていった。
カクランは立ち上がりルウブを見下ろす。
気のせいか? 寝てるみたいなのに眠ってないみたいな……。
するとルウブがゆっくりと目を開けた。カクランは驚いてただ見ている。
「カク……」
「ルウブ大丈夫……なのか?」
ルウブは重い身体を起こし、カクランの腕を掴んだ。
「オレを殺せ。まだあいつが居るんだ」
カクランはその言葉に驚愕し俯いた。だが、その目は失望したような眼差しでルウブを見下ろしていた。
「カク……?」
ルウブは珍しく感情を表に出したように驚いていた。
「それってよ、僕に嫌な後始末を任せるって事だよな? オレはルウブに助けてだなんて一度も言ってないのに、何でだよ!」
カクランは腕を掴むルウブを押し離した。
「助けるのは自由だよ。だけど、勝手に助けてもう駄目だから殺してくれだって? それって最終的にオレには罪悪感しか残らねぇって分かんねーのかよ! それって助けたことになんのか?」
一息つくとルウブから目をそらした。
「ルウブは……もっと、他人を頼らない奴だと思ってた。心配かけた上に始末までさせんなよ」
カクランが後退するのでルウブは手を伸ばすが届かずまた意識の底に引きずり込まれて行った。
カクランは意識が無いルウブに近づく。
「別に殺さないとは言ってないけどな」
そうやすやすと僕が殺せるわけないだろ。
ーーガラッ
「どうした? 怒鳴って……」
ルナールがブラザードラゴンの二人を連れて戻って来た。体勢が変わって居るルウブを不思議そうに見ていだが、連れて来た一人がルウブを背負ったのでそのまま何も言わず出て行った。
カクランは両手を組み伸びをし、深く空気を吸った。
「はぁ……目が覚めたら謝んないとな……」
ルウブの奴意外とよわっ……。昔泣かせたのはテンのやつだ、僕じゃないや。




