強制的
バムは船の一室で少しぶかっとした服を着て袖をブラブラさせている美来を不思議そうに見ていた。
「その服ってさ」
「レゲインの上着だよ。洗って返せって云われてたみたいで、部屋に畳んで置いてあった」
「でも出てく時、レゲイン上着着てたよ」
「バムだって何枚か同じ服持ってんじゃん。確か、戦闘で破れた時の替えだったよね?」
バムはそのまま黙り込んだ。その瞬間出港の汽笛が鳴り響く。
カクランは病室で眠たく働かない頭を振る。
「ルウブ……」
昨晩、レゲインの住所を調べに校長室に忍び込んでいたお陰で、寝不足になってしまっていた。調べ物がなければ二日酔いでこの場にすら来られなかったかもしれない。
ルウブを見ると眠っているだけのように見えた。
「何で僕が。何年も生きて、別々に暮らすようになってからも、何でそういう事するんだよルウブは」
レゲインが寝かけているところで扉が開いた。かおを上げるが誰も入ってこない。
「…………」
逃げれるのではと淡い期待を抱き外に出ようとすると牢の中に突き返された。
「っ!?」
「レゲイン。何を逃げようとしてる」
目の前にはレゲインの父テラスが腕を組み見下ろしていた。溜まっていた仕事をようやく終え戻ってきたのだろう。
「魔力があるか確かめていたそうだな。脱走してないところを見ると魔力自体消えていたみたいだな」
入り口を見ると執事が無言でこちらから目をそらし立っていた。きっと使用人が交代でレゲインの様子を伺っていたのだろう。
「十三年、お前はあの学校に行くにはまだ子供過ぎるとは思わないのか? その体を見て分かるだろ、ティーアンとしてのお前は十歳にも満たない。あんな所で命を捨てるな」
「何歳になったって俺をあの学校に行かせる気なんて無いくせに何言ってんだよ!」
レゲインが立ち上がろうとするとテラスは目の前に屈んだ。
「当たり前だ。お前は自分の立場を理解する必要があるようだな、今のお前は普通のティーアンの体だ。魔女なんて関係無い」
そう言い聞かせるように言うと立ち上がり出口の方を向く。
「数日後、ある家の娘さんと会ってもらうからな。それまで気が変わらない様なら拷問も覚悟しておく事だな」
「は……? どういう、まさか俺に結婚の約束でもしろってんのか!?」
テラスは無言でレゲインを見ると出て行った。
レゲインは俯き歯をくいしばる。横に下ろしていた手を握り遣る瀬無い気持ちを抑え込んだ。
家なんてどうだっていい。あいつだって普通に生きてりゃあ死ぬ事なんて無いんだから後継なんていらないだろ。
黙り込んでいたはずの執事はいつの間にかレゲインの前に来ていた。顔を上げて見ると執事はレゲインの腕を掴み立ち上がらせた。
「お前……」
「面倒を見ておけとの事ですので。寒いのなら寒いと言って頂けば毛布でも用意いたしましたのに」
「は? クシュンッ! 言わなくても寒いって分かるだろ、来ても何も聞かなかったじゃねぇか」
立ち上がり出口の方へ何かを取りに行くのでレゲインは黙り込んだ。執事は持ってきた毛布をレゲインの肩にかける。
「…………」
「此処からは出せませんが、何か他にいるものはありますか?」
「ゲーム機」
「すみません、通信機器も駄目だと申し付けられております」
「じゃあ何も無い」
レゲインがムッスリとして役に立たないなとでも言いたげな目を逸らした。それを見た執事はもう用事はないのだと判断し牢から出て行った。




