力不足
カクランに追いついてきた美来とバムが駆け寄った。
「カクラン、泣いてるの?」
カクランは両手をつき声を殺して悔しそうに泣いていた。バムは慰める様にカクランの手に手を重ねている美来を見るとルウブの脈を確認した。
死んでもいない人を前に何故カクランは悔しそうにして美来はその苦しさがよく分かるかの様に心配そうにしているのかをバムは理解できなかった。
「生きてるのに……?」
カクランは袖で涙を拭うと顔を上げた。
「そうだね。別に死んではいないよね」
その後、ルウブを連れて教会でナーゲルやはぐれたエリスンとディールスと合流し、警備学校へと戻った。その時、こっそりとシュウィが付けているとは知らずに。
病室ではカクランに半分ほど脅され仕方なくヤギがルウブの診察をしていた。
「外傷はないんだけれどねぇ〜魂のことに関しては専門外だからどうしようもないんだよ。これは私の考えなんだけどね、意識の底でお互い生きてるんじゃないかって」
「そう……」
暗い顔をするカクランを見たヤギは思いっきり背中を叩いた。
「あはは、そんな顔するなんて君には合わないもんだから笑えるね」
何度も同じ勢いで背中を叩かれるのでカクランは思わず噎せてしまった。
「ぼ、僕の肺潰す気かよ」
「これぐらいで潰れるほど君はやわじゃないじゃないか〜、さて、私は忙しいからね」
ヤギは扉に手をかける。
「あぁ、その、君のお兄さん、ここには置いておかない方がいいと思うよ。いろんな意味でね」
ヤギが出て行ったのを確認するとカクランは椅子に腰掛け携帯を取り出した。すると一緒に入っていたピアスが床に落ちる。
ピアスを拾い上げどうしようかと考えた。自分が持っていても無くしてしまう可能性がある、かと言ってルウブに着ければ後から何をされるか分からない。
氷漬けにされるかも……。いや、無くしたら処刑じゃないか!!
外れている方に着けようとしたが、ヤギに傷を治されピアスを刺す穴まで塞がっていた。
「……ずれたら凍結だ。まぁ、どうせ意識無いし僕が付けても気がつかないだろ」
そう適当に考えピアスをぶっ刺しておいた。
携帯を持ち直しルウブの携帯へ電話をかけた。
美来とバムは戻ってきたディネの家に居座っていた。
「君たちいい加減ぼくの家から出てっ……」
ーーバシンッ!!
ジャンケンに負けた美来が頭を押さえて思わずそのまま屈むとバムが振り下ろしたハリセンがディネの頭に直撃してしまった。
「美来ちゃん、避けちゃダメじゃんか」
「よ、避けるよ、防げてもバムの痛いから。ほら、ディネが声出せないぐらい痛そうにしてるじゃん」
ディネは吹っ飛ばされ床に転がって頭を押さえ足をジタバタさせていた。美来は椅子に膝を立て背もたれからディネを覗き込む。
「あんの受けて黙って反撃できるのはレゲインぐらいしかいないよ」
「ゲレインは駄目だよその場で伸びて三日間目すら合わせてくれなかったんだから」
「バム、手加減できるようにして」
痛みが引いてきたディネはフラフラする頭を押さえなんとか立ち上がる。
「出てってよ」
「嫌だよ、いつも三人でいたのに二人だけに急になると少し物足りないからさ」
「だからってぼくはレゲインの代わりはできないからね!」
美来はディネの意見に共感し頷いていた。
「そういえば、レゲインってどこ行ったの?」
「家に帰るって言ってたけど。連絡しても音信不通で、どう思う?」
バムが美来に聞くが美来はディネの方を見て答えを促した。
「ぼくに聞くの? 携帯とか親に禁止されてるとか?」
「ディネが答えるからもっと突拍子もないこと言うかと思っちゃったよ。死んだとかさ」
「そんな憶測軽々と言えるわけないだろ!」
「私は別にレゲインが死んでもいいもん。美来ちゃんが悲しむから生きててもらわないと困るだけだし」
「うっわっ……酷い奴」
ディネがドン引きしてそう言うので頭にきたバムはハリセンを振りかざしディネを追いかけ回した。
「二人ともやめなよ。バムだって本当は心配してるんでしょ? 物足りないって呟いてるんだから」
「だって、物理的にからかう相手いなくなったんだもん……物足りないよ」
「酷いね」
美来がふざけてそう言うとバムはしゃがみ込んで顔を伏せた。
「美来ちゃんまでそんなこと言うー!」




