ルウブの失態
ルウブは真っ暗な洞窟の中へ入ると後ろを振り返り身構えた。
「フフフッ君って意外と馬鹿なのかな? ブラックドラゴンの能力が一番活かされる場所が何処か知らないの?」
背後から何かが来るのを感じ咄嗟に横に飛びのいた。立っていた場所に何かが突き刺さり地面が砕ける音がした。
こいつ、さっきまでずっとオレをここに誘導してやがったのか。
思えば差し掛かった分かれ道全てが瓦礫に埋まり通れなくなっていた。ルウブは瓦礫を破って進もうとも考えたが無駄な体力を使わないよう突き進んでいたのだ。
「チッ……!」
更に自分に飛んでくる攻撃を感じ取り避ける。
「目が慣れない暗闇で攻撃を避け続けるなんて君でもきついだろ?」
「てめぇも同じだろ」
突然背後に現れたルウブの槍の攻撃をメランはギリギリで避け後ろに飛びのき振り返ったがその場にルウブは居ない。前を向くと腹部を槍が貫いた。だが、メランは口元に笑みを浮かべる。
「なっ……!?」
ルウブは自分の体が動かない事に慌てる。メランが口元の血を拭い槍を伝い近づいてくる。
「暗闇の中は全て把握できるんだ、そんな事も知らないのか?」
手元まで来てルウブの頬に触れる。
「っ……触んじゃねぇ!」
手を振り払い槍を離そうとするも一ミリも体が動かない。メランが顔を近づけた次の瞬間、洞窟内から地下墓地全てが凍りついた。
カランと言う音と共にメランの体はその場に倒れ持ち手に戻った槍は凍った地面に転がった。
やばい予感がしたカクランは咄嗟にシュウィのいる方へ美来、バム、ディネを押しやり護符を取り出し結界を張っていた。結界の外は凍りつき結界の形をかたどった氷の膜が出来上がっている。
「な、何が……」
「クシュンッ! さ、寒っ美来ちゃん」
「パンダって寒いところ大丈夫なんじゃ?」
驚きの声を上げる三人とは別で、シュウィは声も出せずにドーム状になった氷の膜を見つめていた。
カクランは結界を解き氷の膜を砕いた。
「ふぅ、危なかったな。もう少しで氷の石像になってたよ」
カクランが砕いてできた穴から美来達が出てきた。通路はまるで巨大冷凍庫の様に冷えて凍った部分が白い結晶で覆われていた。
凍った床に足を踏み出したディネは足を滑らせ尻餅をついてしまった。
「気をつけろ、凍ってるから滑るかも。三人はここで待ってて、僕は奥見てくるからさ」
カクランはそう言うと三人に有無を言わせず走って行ってしまった。
「先生、ルウブの事が心配なのかな? 付いてく?」
バムが美来に問う。美来はそれに無言で頷いた。
カクランの後を追ってディネを置いて二人は走って行った。
「ちょっと、待ってよ!!」
ディネは慌てて付いて行こうとし、また足を滑らせ前にずっこけてしまった。
何で美来達は滑らないんだよ!?
「ルウブ!」
カクランは名前を呼びながら探すが一向に返事は来ない。ルウブが無事ならさっきの氷結で決着が付き、呼んで回れば昔の様にその辺から現れ声がかけられるはずだと思っていたのだ。
「あの氷結で無事な奴なんてそうそう居ないはずだけど……」
吐く息が周りの空気に冷やされ白くなって見えた。
バム達が居るのを知っててやったんならよっぽど危ない状況だったんだよな……。一体誰と闘ってたんだ?
「ルウブ! 返事しろよ!」
シュウィの悲鳴で甚振るのを止めてさっさと殺そうとした時に敵に遭遇したんだろうな、相手は魔女か?
カクランの声は墓地全体に響いて聞こえていた。ルウブの耳にも届いたいたのだ。
カクランは道が塞がれ一本道となった通路を走り、洞窟に差し掛かった。
「ハァハァハァ……」
一呼吸つき足元に気をつけながら奥へ進む。開けた空間へ入り足を止めた。
「ルウブ?」
倒れたメランの前に立ち尽くすルウブを見つけ駆け寄る。
「ルウブ……? ルウブ!」
虚ろな目をして返事のないルウブの肩に手を置き呼びかけると微かに口元が動いた。
「カクラ……ン……」
ルウブは暗闇の先に見えるカクランの方に必死で手を伸ばしていた。
何で、カクがここに? オレがあいつ見て泣いてるなんてあり得ない。表で流れてなけりゃあいいんだけどな……。
必死で伸ばしたその手は届かず、入り込んできたメランに意識の底へ引きずり込まれていった。
「おいっ……!」
カクランが体を揺すろうとした瞬間、ルウブは力が抜けたようにその場に倒れ目を閉じた。カクランは呆然としその場に膝をついた。
「嘘だろ……? 何でルウブが」
カクランの後ろにヘルバが姿を現しメランの体を肩に担いだ。
「メラン、聞こえているんでしょう? 貴重な体を殺させない様に気をつけてほしいわね、この体が息絶えて叱られるのは私なのよ? それと、勝手な行動は慎みなさい」
それだけルウブの中に入り込んだメランの魂に呼びかけると体を持って姿を消した。




