危機回避
ナーゲルに居場所を聞いた美来とカクランは地下墓地の入り口に来ていた。
「電気消えてるな……」
「消えてるんじゃなくて割れてるんだよ、ほら」
美来が階段の方にライトを向けるとガラスの破片が散らばっていた。
「電気の方見てそれは分かるって。言い方があるだろ? にしても、おかしいな」
「何が?」
「この近くに水なんて無いのに何で濡れてるんだ?」
カクランが階段に一歩足を踏み出すと何かで足を滑らせそのまま階段下まで痛そうな音と呻き声とともに転がっていった。
「カクラン!?」
美来は二人めの被害者にならないように手すりにしがみ付き慎重に階段を下った。下ではカクランが転がっている。
「カクラン、大丈夫? 起きてる? 生きてる?」
反応が無いが口元が笑っているのが見えたので美来はカクランを踏みつけて一人で通路の先へ向かおうとした。
「無視しないでよ美来!」
カクランは慌てて美来に駆け寄った。よく見ると頭から血が流れている。
「血が出てるけど……」
「うわっ!? 水かと思ってた。タオル無いんだよな」
カクランは仕方なさそうに黒いシャツで頭の血を拭った。
ルウブが蹴りつけようとした瞬間、シュウィは言った。
「い、いいんですか? このままではあの二人は目的の場所に辿り着いてここ一帯のティーアンは消えるんですよ!」
ルウブは蹴りつけるのをやめシュウィの胸倉を掴み起き上がらせる。
「それは命乞いか?」
「ぐっ……あ、当たり前です! あんな死に方ごめんなんですよ!」
次の瞬間、シュウィの悲鳴が地下墓地全体に響き渡った。それは水流に追われているバムとディネ意外に届いていた。
美来はその悲鳴を聞いて立ち止まった。
「美来? どうかしたの?」
「うんん、バムじゃないよね?」
「違うだろ。バムは何方かと言えば声を抑えるタイプだろ?」
「カクラン。もう何も言わないほうがいい」
美来がすれ違いざまドン引きした目でカクランと目を合わせて行った。
「えっ? ちょっ何で僕、卑猥なこと言ったみたいになってるの?」
バムとディネは天井が崩れてしまった通路に行く手を阻まれていた。
「ど、どうしょう!?」
「……さっきから考えてたけど。君、カメラ持ってないの?」
「あ、それだそれ!」
バムは言われて思い出したのかカメラを取り出し水に照準を合わせシャッターを切った。その場から水だけ消える。
「自分の能力忘れたら意味ないと思うけどな」
「覚えてるし! ……!?」
突然ディネの足元とロケットが青く光りだした。
「な、何だこれ」
全身が光に包まれるとバムの周りも青い光で包まれた。
「っ!? こ、これってあの時の光と似て……このままじゃ消える」
「これだ……」
ディネはひときわ輝いているロケットを取り出していた。
「君のカメラって物の力を封じたりできる?」
「できるけど……えっ!? 取っちゃっていいの?」
ディネは頷く。ディネの足元を見ると少しずつ透けてきていた。
「ぼくはロケットを守った挙句消えるのはまっぴらごめんだからね。早くして」
必死にいうディネにバムは頷きカメラをロケットに向けた。
「チッ……しつこい」
通路をかけるルウブの後ろからは凍り、針が襲ってくる床をメランが追いかけてきていた。
これだけの氷の針を避けやがって……串刺しにしてぇところだが、タイミングが合うはずねぇな。
「君って魔女を全滅させようとしているのだとばかり思ってたけど、そういうわけじゃないんだな」
「あ? うっせーな。そんな無駄口叩いてて避けてられるとでも思ってんのか?」
「君こそ走りながらこれだけ正確に針を突き立てるなんてさすが……その魔力欲しいな」
ルウブは後ろから追ってくるメランを見ると前を向きなおした。
気色悪いな、あいつ。オレは男とキスなんてしたくねぇんだよ!
「あの魔女を殺さなかったのは何か理由があるのか?」
シュウィはルウブに殺されることはなく腕を凍らされ千切られただけで済み、痛みに悶え苦しんでいた。
メランはルウブが質問に答えず走っているのを見て顔をしかめた。
「答えろよ!」
誰が答えるか。
ルウブはすぐ先が土砂で埋まっており壁に穴が空いているのが見え、仕方なく穴の方へ入って行った。中は足元が不安定で少し滑ってしまいながらも奥へ向かう。
後ろからはメランが足元の悪さをもろともせず追いかけてくるのが見えた。
「マジしつけぇ……最悪だ」
前を見ると開けた場所が見えたが、その先に道が無いのがわかった。戦闘は避けられないのが目に見えている。
仕方ねぇな。同族殺しはしたくねぇんだけど。




