襲った理由
未来が膨れていると後ろのドアから教頭が出てきて、未来に話しかける。
「美来、今回は命拾いをしたなこれは君達に見せようとしていたカクランの元に届いた手紙だじゃあな」
開けた跡のある封筒を渡して教頭は去っていった。
気がつくと周りにメランの姿はなく、バムのところに向かう途中だったことを思い出しバムの病室に向かった。
カクランは表情を変えずに考え込んでいた。
あの時あの魔女が来なけりゃあバムも僕も死んでた……
「嫌だな……」
シシア帝国の森にある村に着いたカクランは、帝国の信教するシシア教の数カ所ある中の一つの神殿の中に入った。
「っ! あれは村の奴ら……」
後ろから明らかに様子のおかしい村の人たちに襲撃を受ける。
よめない動きで刺しにかかったり殴りかかってくるのを全て受け流していた。
だが、何処からか声が聞こえてきた。
「そんなんじゃラチがあかないわよ? フフフッ本気でパンダちゃんを助けに来てるのかしら? 遅かったらさっさと斬り刻んで行くのもいいわねぇ」
避けてるんじゃダメ……か……。
カクランは次にナイフで切りかかってきた奴を蹴り飛ばし進行方向にいた人達の頭上を飛び越えながら天上にぶつからないように狐の姿に変わる。
着陸すると同時に人の姿へと戻り、その方向へ走る。
「くそっ! 何体居るんだよ!?」
後ろからは入り口で出会った人と途中から混ざった人、約20人ほどが来ている。
あれは……多分、悪魔に憑依させられた奴らだな、僕だけでなんとかできるかな?せめて、バムを助け出すまでもつといいけれど……
広い行き止まりの部屋に出ると入り口付近に二枚の護符を貼り、少し離れた場所に二枚貼った。その護符同士をつないだ中に全員入ったところを見て結界を張った。
「づっ……暴れないでくれよ僕だってそんなに大量の悪魔憑きを抑え込むのは難しいんだから」
中の人が結界に体当たりするたび自分に衝撃がくる。
ーー後ろから剣が振り下ろされた。
カクランは殺気に反応し、ギリギリ避けて後ろを向く。
そこにいたのは寂しそうな表情をしたバムだった。だが奥にもう一人魔女らしき女性が居る。
「ウフフフッよく一人でいらっしゃったわねキツネさん」
「成る程、そういうことね。女の子が二人そろって僕を歓迎してくれるのかな?」
「口の減らない子だ事……バム? その狐を根絶やしにしなさい」
指につけた指輪に口を近づけバムに命令を出した。
バムはその命令を受け、迷わずカクランを殺しにかかる。カクランはポケットから持ち手のようなものを取り出す、すると赤い紐が刃の根元と、さやの先をまたいでつけられた槍が現れ、それでバムの攻撃を弾く。
「バムで僕が殺せるとでも!」
「えぇ、殺せるわよ、だって案外強い悪魔を憑依させた人を二人残したのだもの」
魔女の後ろから二人の人が飛び出してきた。
バム側について襲ってくる二人は他のものより格段に動きが良い。
それでもまだ防ぐ事はできた、魔女からの不意打ちが無ければ。
ーービュンっという音とともに足らへんに透明な球体ができ、足首を削った。
「あっ……!」
切り取られるまではいかなかったもののまともに立てない、そのせいで身体は背後に傾いていっていた。
更に結界を維持できず破られてしまい、一斉にカクランに襲いかかる。
ーー終わったのかな?
そう思った瞬間、木の床が動き出し悪魔達を伸びた枝で串刺しにした。
更にバムを弾き飛ばし意識を失わせる、そしてそ魔女の指輪を指ごと破壊した。
「な、何なのよ!?」
「真空の魔女アイレ? カクランは私の契約者との契約で死なせないようにしないといけないの邪魔しないでくれるかしら?」
アイレと呼ばれた魔女は、声で誰か気がつくと怒り出す。
「ヘルバね!? あなたに私のやる事なんて分からないわ! 私の狙いは狐じゃないのだもの誘き出すための罠……」
「あら、じゃあ罠のかけ方を間違えたようね」
木の床から現れたのはカクランが森で会った魔女だった。
「追放魔女、アイレ? あなたは私が責任を持って城に連れて行くわ」
カクランはそこで意識が途切れた。