目撃
常時開放されている教室でバムが涼んでいるとナーゲル、エリスン、ディールスが入ってきた。二人ともエリスンの話に振り回されている様に見える。
「あ、いるじゃん一人だけ。二人夜逃げしたみたいな」
「エリスン、たとえ悪い。ナーゲル、話して」
「こっちに振るのかよ? まぁいいけど」
エリスンは話すと長くなるので誰かに話しかけさせるのは避けさせていた。ディールスは面倒くさがり話したがらずナーゲルに振った。ナーゲルは仕方なくバムの前に行く。
「バム、その、ちょっといいか?」
「何でわざわざ聞くの? 話しかけてる時点で時間割いてんだからそのまま言えばいいじゃん?」
「お前……それ、拗ねてるのか?」
バムは頬を膨らませ机に伏せるそこから首を捻りナーゲルの方を見た。
「何?」
「はぁ……ディネって奴のこと、気にしてたよな?」
「気にして心配してたの美来ちゃんね。それがどうしたの?」
「えっ……じゃあバムは彼奴がどうなってもいいってことか。言う必要なくない?」
ナーゲルは後ろにいる二人に確認を取る。
「ナーゲル決める。歳上」
「同感だね。長い物には巻かれろって、あれ? 何年生きてるんだっけ?」
ナーゲルは仕方なさそうに頭をかくとバムは興味を持ったのか体を起こしてナーゲルを見上げた。
「アマルフィ王国で魔女の目撃情報が多発してるんだ」
「そっちじゃなくて、ナーゲルは何年生きてるの?」
ナーゲルは机の上に投げ出そうとしていた写真から手を離し机に手をついた。ドンという音とともに写真が舞い落ちる。
「そっちかよ。先生より長く生きてると思う。言わなかったけどあの人、結構昔に見たことあるんだよ、だから多分な」
「おじいちゃん」
「仙人って言ってくれ」
するとエリスンがクスクスと笑いながら言う。
「確かに、世界変動から一ミリも歳とらずにいるんだから仙人技だ。世界変動後に産まれてたらもっと子供の見た目だったのかも」
呆れたナーゲルはディールスに目で合図をした。合図をされたディールスはエリスンの口にガムテープを貼り廊下に引きずり出していった。廊下からは小さなうめき声が聞こえた。
バムは机に裏返った写真を表替えしてみる。
「これ、思いっきりあの時の魔女じゃん」
「それだけじゃない、これもだ」
もう一枚写真を出した。さっきの写真と繋がって見える、人ごみの中に何かを尾行する様なメランの姿があった。
「な、あの時このクラスを襲いに来た人。魔女をつけてる様に見えないか?」
バムは確かにと思ったが二枚目の写真の端っこから青いマフラーが覗いているのを見つけた。
「これ……違う。ルウブが追いかけられてる」
「ルウブ? それって先生のお兄さんのことか?」
バムは頷きマフラーが写り込んでいる部分を指差した。ナーゲルはそれを見て本当にそうなのかと首を傾げた。
「よし、帰ってきた美来ちゃん驚かせるつもりで行ってみようかな。ディネ助けれてもそれは偶然だよ」
「一人でか?」
ナーゲルに指摘されバムは携帯を取り出しレゲインに繋げる。携帯を耳に当てたまま一分程黙り込んだバムをナーゲルは無言で見る。
「ナゲール、ゲレインが出ない」
「ナーゲルね! 出れないんじゃないのか?」
バムは首を横に振る。今までバムや美来がレゲインに連絡をすると必ず出た、それが入浴中だとしても。通話に出ないだけの瑣末ごとだと思いバムはチャットに切り替えた。
「レゲインどうしちゃったんだろ? 戦闘中? これは危なすぎるしそう無いよね……」
「あ、レゲインって言った。レゲイン以外に先生とかいるだろ、当たっとけよ」
ナーゲルはそう言って教室から出て行こうとする。
「待って! 先生は美来ちゃんの所だから無理。ナーゲル達来てよ」
「は!? そんな無理矢理な……こっちの目元見てみろよ、起きてられない」
「写真持ってきた責任は重いよ?」
「何処でそんな屁理屈習ったんだ。全く行くわけ……」
すぐ横からディールスが顔を覗かせる。
「ナーゲル、大人気ない。起きてる為の薬持ってる。行ける」
そう言って扉とナーゲルの間からディールスが手を出し親指を立てるのでナーゲルは嫌そうな顔をした。




