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入学式

入学式などを終えた美来は帰宅しようと歩道を歩いていた。だが地下牢での出来事を考え込みすぎ忘れる事ができずにいたお陰で全く見知らぬ道に出てしまった。

「やっちゃった……」

「美来、こっち家じゃないよね?」

方に手を置かれ声を掛けられて驚き振り向くとカクランが黒いスーツをボタンを閉めず着て紅色のネクタイを付け立っていた。

よく見るとコールである狐耳のカチューシャを着けていない。

「カ……クラン? コールは? 何でここに?」

「僕に決まってるよ。人に紛れ込んでんだから着けないよ、目立つだろ?」

赤いネクタイだけでも目立っているのではと思いながらも美来は指摘せずにいた。

「ここにいる理由は美来の護衛かな? ねぇ、気がついた? 僕、入学式に居たんだけど高校生の親も結構若いんだね身体的に僕の方が若いけど」

「カクランってそう失礼な事言ったっけ?」

「……いや、昼間に欲を満たすための道具にされかけたからちょっと鬱憤が溜まっただけ。僕は不倫とか浮気に関わりたくない」

カクランの疲れた顔を見て美来は自業自得だとあきれ顔をした。カクランが家まで返してくれるというので送ってもらい帰ることができた。

だが、その夜。美来は母親に言われ先にお風呂に入ろうと脱衣所の戸を開けた。

「あ……」

「えっ……美来……」

頭にタオルをかぶり下着だけを履き終えたカクランが突っ立っていたのが見え戸をすぐに閉めた。

「お母さん、警察って電話番号なんだっけ?」

「え? 何? 百十番だったはずだけど、どうして?」

美来は受話器を取る。カクランはそれを聞き慌ててコールを片手に出て行き無言で美来の手を抑え首を左右に振る。

「やめて、僕不審者じゃないから」

「えっ? だって露出狂が家に上がりこんでるんだから」

「無断だけど下着履いてるよ!?」

思わず声を上げてしまうと、美来の母親がキッチンの方から来る足音が聞こえた。

「美来、誰かいるの? あれ?」

母親が顔を覗かせると美来の足元には大型犬のかなり大きい狐が座っていた。狐のはずだが犬の様にキュンキュンと鳴いた。

「あらあら、美来、犬の事で警察に電話なんてしちゃ駄目じゃないの」

母親は狐の前に膝をつき楽しそうに頭や首を撫でる。狐になっているカクランも満更でもなさそうだ。

「動物は保健所でしょ?」

「キュッ!?」

カクランの息が詰まったのが聞こえた。美来はその間、今まで親に見せた事がない程の冷たい目でカクランを見ていた。

カクランは美来の目など気にせず保健所送りにされないよう母親に媚びを売るように可愛らしい犬の真似をしていた。内心では相当焦っているのだろう、何しろ人の姿に戻れば下着一枚しか着ていないのだから。

「んふふ仕方ないわね、今夜だけ泊めてあげるよ。保健所には送らないから」

母親はカクランを美来に任せてキッチンへ戻っていった。

「ふぅ……危なかった」

「狐のくせに迫真の演技だったね」

「狐ってもこの姿でも鳴けないんだよ? 僕、服着たいんだけど見張っててくれるかな?」

美来は仕方なく戸の前で誰も入ってこないよう見張った。カクランを自分の部屋に閉じ込めた後、美来もお風呂に入った。


「美来のお母さん優しいね、君と似てるよ」

「親子だもん」

カクランはいつもの服装で椅子に腰掛けていた。美来はベットに寝転がりゲームをする。

美来はこの状況に身の危険を感じたりしないのか? いい年頃の子が男と二人きりって事気にしないのはどうかと……。

カクランはそう思いながらも聞こうとはしなかった。

「美来、まだこないだの事覚えてるのか?」

「うん……覚えてる。カクラン何で抱きしめてきたの?」

予想もしなかった質問にカクランは一瞬思考が停止した。

「深いわけはないけど……答えなきゃ駄目か?」

「えっ? 私が女の子だからって思ってた」

「僕、酷い奴だな! そんな理由でやらないよ。この話はまた明日ね、お休み」

「お休み……」

美来は挨拶をしてしばらくしてから気がついた。

「えっ!? ここで寝るの!?」

ベットの足元を見るとカクランは床の上に狐の姿で丸まって眠っていた。一度目を開け美来を見たが大きく息を吸うとまた目を瞑った。

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