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退院

レゲインが悩み込んでいると突然頭に重心がかかった。重心はカクランが頭を抑えてきたせいだとわかりその手を払う。

「気持ちもわからないのに女の子に声をかけようとするなよ」

「何のことだよ、俺別に何も言おうとしてねーし。いつ入って来やがった!」

カクランはニコニコしながら前髪の部分を指差す。レゲインは自分の髪にピンが付けられたことに気が付き外して見た。

「これって……」

班のピンだ。ヒヨコの形に5と刻まれている。

「バムが一人で取ってくれたんだから後でお礼言いなよ」

「頼んでねーし」

「レゲインが言わなくても美来が言うだろ?」

カクランは美来の方へ行きピンを手渡しする。美来はそれを受け取るが浮かない顔をしてピンをジッと見つめる。

「バムは?」

「ちょっと無茶して診察中。骨折だからすぐに治してもらえるよ」

更に暗い顔をする美来を見てカクランは何かを取り出し美来の口に突っ込んだ。美来は驚いたが、それがクッキーだと気がつき食べる。

「美来、向こうで言う八月三日まで美来の世界に戻るよ」

「ふへ? 私の住んでた世界?」

「そう、確か入学式の日に連れてこられたんだよな? こっちの世界が一週間経つ間に狂った時間が戻るからその間だけ帰宅。明日から戻るから必要な物まとめておいて」

カクランは部屋から出て行こうとしたがあることを思い出し美来の方へ戻ってきた。

「忘れてた。これ、高校のプリント。持ち物書いてあるやつ」

「何で持ってるの?」

「秘密、でもこれ無いと美来用意できないだろ? じゃまたね」

プリントを渡しカクランは手を振り出て行った。それを見たレゲインは口を開く。

「明日から夏休みだからな。俺も用事あるし……バムは一人になるんじゃねーか?」

「何で一人?」

「班三人だけだろ。俺らこの学校出たら彼奴一人だろ?」

美来はしばらくキョトンとしていたが口元についたクッキーのカスを払うと言った。

「レゲインがバムの心配? 珍しいね雪降るよ?」

「うるせー! バ〜カ」

レゲインは布団の中に潜り込んでしまった。美来はその様子を見ながらカクランが置いていってくれたクッキーを摘んで食べる。

そう言えば、レゲインって十三年しか生きてないって事は子供? 見た目が同年代だから気にしなかったな……。


バムは勢いよく扉を開けて病室に入った。

「美来ちゃん!!」

だがそれに反応する人は居なかった。レゲインがやっているゲームのボタン音がカチャカチャと虚しく響いた。

「美来なら昨日退院して家に帰った。静かにしろよ」

バムは広げていた腕を下ろしスライド式の扉を手でゆっくり閉め病室内に入った。そして空になったベットに腰掛ける。

「レゲイン、先生は?」

「知らね、ナンパしに行ってんじゃねーの?」

「何処にもいなかった。詰まらない〜夏休み入ったのに誰もいないとか!」

レゲインはその中に自分が含まれていないことを気にしながらゲーム機の電源を切る。

「じゃあ、俺、何も言わずに出てって良いってことだな」

「うん、何処行くの?」

「実家、いつ帰るか分からねーから」

そう言うと退院する為にまとめておいた荷物を持ち部屋から出て行った。バムはしばらく理解ができずにいた。

「えっま、待って!?」

慌ててレゲインを追いかけて飛び出した。

「何だよ、お前も帰ればいいだろ?」

「そんな簡単に言わないでよ、無断で家飛び出したのにみすみすと帰れるわけないじゃん! 付いて行っちゃダメ?」

「駄目に決まってんだろ、誰か連れてったら何て言われるか」

一人で残るのがどうしても嫌なバムは考え込むと提案を出した。

「彼女って事なら」

「俺に暗殺されてぇのか?」

レゲインの目が本気だったのでバムはそれ以上策略を編むのをやめ一人で残る事を決めた。

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