地下牢入り口
カクランとバムはひと気の少ない場所で交番を探していた。
「無いみたいだね、襲われたらひとたまりも無いからかな?」
「うん……」
「バム、止まって」
カクランは周りを警戒すると地面に座り込み耳を当てた。地面の下からは何かが削られる音が聞こえてきた。
「これって……!」
耳を離すと地面にヒビが入り始めていた。
「せ、先生っ!」
「やば……っ!?」
その場から逃げようと立ち上がった瞬間地面が陥没しバムと共に落下した。
砂埃にむせながらもカクランは目を開ける。瓦礫の間に沿うように倒れて起き上がりにくい。
「バム! 大丈夫か!?」
呼びかけると近くの瓦礫がひっくり返され下からバムが出てきた。カクランはなんとか起き上がりバムの手をとって瓦礫の無い場所に下りる。
「何があったの?」
「さぁ……!」
カクランは足元に違和感を感じ床を見た。至る所に血と肉片が飛び散っていて足元の違和感はそれを踏んでいたからだ。
「虐殺現場だな、こんなの久しぶりに見たよ。あの穴はふさいだ方がいいね」
「こんな所歩くのかぁ〜複雑な気分」
カクランは護符を取り出し上に空いている穴を結界で塞ぐ。
「バムの靴は赤いから汚れは目立たないよ」
「先生っ! そういう意味じゃ無いよ!」
「ミンチになったもの見てまだ人だって思えるの凄いよ……僕は跡形もなさ過ぎて同情すらできないよ」
ミンチどころでは無いもうムースと言っても良いだろう。
「僕は血痕にしか思えないけど、ルウブなら豚のミンチを失敗してぶちまけたって言うんだろうな」
「先生、豚のミンチ食べられなくなる」
「あはは、ごめんごめん」
苦笑いをしながら結界を張るためにもう一度登った瓦礫から飛び降り血を避けながら先へ進んだ。
美来とレゲインはまるで血の道標の様なミンチをたどり地下牢の中心であろう広い空間に出た。
「あの巨人の人が殺ったのかな?」
「んなわけねぇだろ、彼奴はあの棒でぶった斬ることしか無理」
レゲインは髪についたままで垂れてきた血を袖で拭う。
「見ろ、どう思う?」
「私に聞くの?」
跡形も無い死体の跡が何本もある道の一本に続いていた。
「レゲイン、他の道行っても分かんないよね」
「だな……」
前に一歩足を出すと当然自分達のいる場所の空間が歪んで見えた。その途端レゲインは美来に突き飛ばされギリギリで美来の事も突き飛ばした。
「づっ……」
「きゃっ!?」
お互い顔を上げるとさっきまでいた場所に半透明の球体が現れ周りのものを削って消えた。
「ふっ、危ねえ」
「レゲイン、ありがと」
「別に、先に反応したのお前だし」
美来は少し照れ臭そうにする。
「あらあら、仲良くなったのねぇ」
声がした方を見ると見覚えのある魔女が血の道とは別の道から足跡をつけながら出てきた。その顔を見たレゲインは驚愕していた。
「アイレ……何で。シシア帝国でヘルバにやられた筈じゃ」
「レゲインちゃんは私の死体を見たのかしら? フフフッ見ての通り私は無事生きているのよ?」
カクランに切り取られた筈のアイレの指は元どおりになっている。
「にしては隈がひでぇな、無事って言えんのか?」
「フフッストレスがたまるのよ魔女でもね、まだ落ち着けないのよね」
ミンチ死体を殺った犯人は自分だと主張している様だった。レゲインは咄嗟に立ち上がり美来の腕を掴んでその場から逃げようとするが、道が全て半透明の球体に塞がれた。
「残念、道は無いわよ?」
「てめぇ……自暴自棄にでもなったのかよ? こんだけの魔力消費して俺と闘おうってんのか?」
「いいえ、その子を渡せば見逃してあげてもいいわ。それにこの場所であなたが魔女の力を使えるものが無いじゃないの」
レゲインは歯を噛み締め美来の方を見る。美来はレゲインを見て、レゲインが自分を魔女に渡そうか迷っているのだと思った。
実際に迷っているとレゲインは腕に一瞬違和感を感じその場からとびのいた。
「あらら、逃げられた。いいわ、十秒待ってあげる」
見るからにレゲインは焦っていた。美来がいくら袖を引っ張って呼んでもなかなか気がつかない。
「レゲイン!」
「! ……な、何だよ? あ?」
耳を貸せというので美来の方に少しかがみ話を聞く。
「んな、お前そんな事何で……」
「暗示みたいに何回も聞かされたんだから覚えてる」
「できるのかよ? お前の集中力で」
美来は頷き銃に手をかける。




