面倒くさい
美来とレゲインは走り疲れ座り込んでいた。
「ケホッ……はぁ……はぁ……レゲインさすがだね」
「は? ……何がだよ? はぁ……」
「だって、鉄格子ブチ折ったじゃん」
「魔力でな」
レゲインは拗ねたように俯いてしまった。美来はさっきの大男を思い出す。
「え、レゲインも腕力でへし折りたいの?」
「んなわけあるか!! あんな筋肉の塊になりたくねーし!」
「失礼だね」
「うるせー!」
レゲインは何を言われても涼しい顔をする美来を見て眉を寄せた。
「でもさ、男子って寧ろ腹筋割ろうとするんじゃないの? レゲインは嫌なの?」
「嫌」
即答……何でそんなに嫌なの。
「つーか、そういう奴の方が好みなのか?」
「好みって? 何の?」
「いや、もういーよ。嫌な理由はそれぞれだろーけど、想像者の考え方が反映されてるからな」
「ふーん、じゃあレゲインは何で嫌なの?」
レゲインは前を向き考える。ここだけは即答ではなかった。
「……面倒くさい。あと、なんか嫌だ、この世界であそこまで筋肉つけんのお前の世界より難しいぞ? 割れてないけど筋肉ある方が良い。それに多分、キツネとルウブでもあんな鉄、簡単に曲げられるだろ」
「何で熱く語るの? 私忘れるのに」
「んなっ!?」
お前が聞いたんだろーが!
レゲインは美来を睨みそっぽを向き立ち上がり先に歩き出してしまった。美来は慌てて置いて行かれないようついて行く。
バムは自分の歩行速度に合わせて歩くカクランの横を歩いていた。
「先生、どうするの?」
「入り口を探す」
「入り口?」
「この国の牢獄は地下にあるんだよ、街全体に張り巡らされていて全て交番に繋がってる」
カクランは説明をしながら上から下へ指をさした。
「交番あそこにあるじゃん? あれじゃダメなの?」
「バムは僕より簡単な考え方するんだね……カトゥルス王国とこの国は相性が悪いんだよ、僕が通してもらえるはずないだろ? 君もね」
「……先生、それ以前の問題だよ、あれ」
交番の方を見ると重たい鉄の防護扉が上がっていて完全に出入りができない状態になっていた。防護扉についたパネルにはセキリュティー検査中との文字が流れていた。
「あ……何かあったみたいだね、ひとけの無い交番から入ろうか」
「ひとけが無いところなんてあるの?」
「地面ぶっ壊すよりいいだろ? ほら、行こう。探せばあるよ」
先生、ひとけの少ない場所の交番見つからなかったら地面ぶち抜くのかな?
バムは首をかしげながらカクランについて行く。
大きな音とともに分厚い鉄の扉が吹っ飛んだ。部屋の方に飛ばしたので中は荒らされたようになってしまった。
「ケホッレゲイン、もう少し静かにできないの?」
「ぶっ壊れる時に結局音するだろ」
レゲインはいつも空き巣でもやっているかのような手付きで机の引き出しなどを漁る。美来は少し後ろめたさを感じながらも部屋の中に入る。
「ねぇ、ここって何の部屋?」
「……看守室だろ?」
美来は部屋を見渡すが看守室にしては鍵がどこにも見当たらない。だが、一つだけずっしりとした黒い金庫が目につく。
「レゲイン、これって金庫」
レゲインは引き出しを荒らしたまま金庫の方へ来ていじる。
「ピッキングとかできるの? 金庫に」
「あ? 俺は空き巣じゃねーんだぞ? できねぇよ……外側に開けるしかないか」
レゲインは美来を引っ張り金庫の正面から退く。バキッという音と共に金庫の扉が吹っ飛んだ。
「うゎっ!?」
驚く美来をよそに金庫の中を覗いた。中身を見て首をかしげ、黒い袋を取り出す。
「なぁ、俺の魔法陣描いた紙はあったけどお前のは……これ以外に何も入ってねぇんだけど」
「えっ? あ、そういえばさ。鉄って磁石つけるとその間だけ連動して磁力もつよね」
そう言いながら美来は飛ばされた金庫の扉を見る。レゲインはその扉をひっくり返した、そこには美来の二丁拳銃とナイフが収められたベルトが引っ付いていた。
「美来、何でそんなこと知ってんだ?」
「何回も録画されてたの見て覚えたから、私の世界でね。え、知らなかったの?」
「いや、知ってるけど。小学生が習うことだろ……」
ベルトごと引き離し美来に渡した。




