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校長の呼び出し

森で美来達を襲撃したケイヴ帝国の男は真っ白な廊下を歩いていた。左右には鉄格子の窓が付いたドアが並んでいる。その中の一つにさしあたった時、一人の中年男性が顔を覗かせ手を出した。

「やあ、プレディ・カドール」

「何」

「君、失敗したようじゃないか。美来に会ったんだろう? ガードが付いてちゃあ仕方ない」

プレディはドアの方へ近寄り中の男性を睨むように見る。

「普通はタダじゃあ済まなかったろうに、妖虫憑きで助かったね」

「黙れ、貴様もこの実験が終われば用無しだろ? 重要な実験体を逃した罪は重い」

格子越しに男性は笑った目を向けた。その目をプレディは睨みつけ廊下の先へ歩き出した。

妖虫憑きにしたのはお前達じゃないか。

「魔女二人もお気の毒だ事」

背後から男性の声が響いて聞こえた。

苛立ちを我慢しながらずれたヘルメットを押さえる。

「チッ……」

あの男嫌いだ、早く死刑になればいいのに。次の作戦に移らないとな。



カクランは一通りの検査を終え、校長の元を訪れていた。

「それで、女遊びにうつつを抜かしてソリトゥーディネをまんまと連れ去られたのか?」

「ひ、否定はできません……」

すると校長はクスクスと堪えるように笑い始めた。カクランが訝しげに見ていると校長は一息つき顔を上げた。

「からかったつもりだったのだが、女遊びと連れ去られたのは別だろう?」

カクランはジトッとした目で口を紡いだ。

「クフフッカクラン、目が君のお兄さんのようになっているぞ?」

「さようですか」

そのまま目を逸らしてしまった。校長はその様子を面白そうに見ながら姿勢を直す。

「本題だが、君の居ない間依頼に出かけた生徒に起きた事を知らせる手紙を送ったのだが一切返事がこなくてね」

「僕の生徒? 誰ですか?」

「美来達だよ、帰ってすら来ないから何かあったんじゃないかと思うんだ」

カクランはその先の言葉を頭に思い浮かべ、苦しそうな顔をし目を逸らした。

「まだ決まった訳じゃない。けれど、最悪の結果であろうと生死の確認は必要だ行ってくれるね?」

「はい……」

カクランは暗い表情で二枚開きの扉のドアノブに手をかけた。その様子を見た校長は机に手をつき椅子の上で立ち上がる。

「カクランっ」

「何ですか?」

「何があっても、君のせいじゃない。それに、美来は主人公候補だそう簡単に死んだりはしないだろう」

「そう……ですね」

カクランが寂しそうに微笑んで出て行くところを無言で見送る事しかできなかった。

「っ……兄弟揃ってか。はぁ……」

カクラン、君はお兄さんとは別の意味で儚いよ。槍使いは自害的な事になるってのも案外ハズレじゃないのかもな。美来が原因でもあるか。

校長は椅子に座り、何かを嘲笑した。


美来は暗い森の中を小さな足と入院着のような服を着て走る夢を見て目が覚めた。

「ヒックシュンッ」

冷んやりとした空気に身震いをする。鉄格子を挟んだ隣から美来に声をかけられた。

「美来、どんな夢みてた?」

膝を抱えて口元を腕で覆っているせいかレゲインの声がこもって聞こえた。

「多分、昔の夢」

「覚えてんの?」

「忘れたけど、何となく昔の夢」

「俺も昔の夢見てた」

レゲインはそう言うと上着を脱ぎ鉄格子の間から丸めて美来に投げ渡した。美来は驚いてレゲインの方を見ると使えよと言うように目で促された。黙って肩に羽織る。

「ありがとう」

「別に、俺、暑かったし。無くすなよ」

「うん、汗臭い」

「はぁ!? ぬ、脱げ! 着るな」

頬を赤くして慌てるレゲインを見て美来は面白そうに笑った。

「冗談なのに」

「不意に冗談言うなよ。たく、こんな状況なのによ」

レゲインは目の前にそびえ立つ鉄格子を見上げた。

「どんな夢見たの? 鉄格子怖いのと関係あるの?」

「はぁ? 俺がいつ鉄格子怖がったよ?」

美来は訳が分からないという顔をレゲインに向けた。レゲインは自分の心を見透かされた様な感覚に気色悪さを感じ前を向き黙り込んだ。

この空間が嫌いなんだよ、昔の事を思い出すから夢まで見るんだ。

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