脱退
ルウブはブリザードラゴンの本拠地である洞窟の自分の書斎で軽く物を整理していた。ディネのインコに近くの店で適当に買った毛糸の布を被せ凍死しないようにし、肩に乗せている。
「ルウブ、本当に群のリーダーをしばらく空けるの? 気にし過ぎなんじゃない? 君の弟、そこまで君を責めたりしないでしょ」
入り口に立って片手を腰に当てているのは白キツネの男でルウブがこの国へ来た時からの友達の一人だ。白い短髪の巻き髪に白い丸耳の髪飾りを付けモコモコした服を着ている。
「別に、カクの事なんて気にしてねぇよ」
「はぁ、そういうのをツンデレっていうんだろ? 俺も忙しいんだけどな」
「じゃあ別の奴」
「どうしても離れるって言うなら頼まれるよ」
インコはルウブの肩から男の方に飛び移る。
悪いな、ルナール。ドラゴン以外で手が空いてて戦力的にも信用できるのがお前しか居なかったんだよ。
「コールの形的にグラウに任せられないもんな」
「ちげーよ、お前がグラウを止めるだろ」
「まーね、いろんな意味で。でも今はグラウ自身断ってくれるはずだよ」
ルウブがルナールの方を見ると、ルウブが驚いていることが分かったのか疑問に答える。
「子供ができたからね」
「あ、そう、そのニヤけ顏やめろ」
「俺に嫉妬か? 意外だね〜ルウブにしては」
ルウブはそれ以上口を開こうとはしない。
違う。ただ、いつも仲良くしてた友達が自分とは違う世界に行っちまう感覚が寂しいだけだ。二人が結婚した後なんて特に関わり方が分からなくなったしな。もしカクランが……って何であいつが出てくんだよ!
「悪かったな……」
「別に、俺は頼まれるつもりだし、今更断る気はないから構わないよ」
「……頼みを受けた途端死ぬ奴みたいなセリフと顔してんぞ」
「不吉なこと言うなよ! ルウブ、戻って来てね…………君自身として」
ルウブは最後の言葉は聞こえなかったが頷き無表情で手の方を向きなおる。ルナールはそんなルウブを見て胸苦しさを感じた。
君が時々、儚く見えるよ。
美来達はこの世界で二番目の大都市に来ていた。
「え? 泊まり込み?」
「あぁ、見廻りの仕事だけで、まともな部屋付きだとさ」
「それで、四週間ぐらい?」
レゲインはバムの方を見ずに頷いた。紙を見て歩いていたがぶつかりかける事はなく、レゲインが避けた相手に美来とバムがぶつかりかけた。
「ここだな……」
レゲインが足を止めた瞬間、バムがレゲインに激突した。美来はバムを避けて前に出る。
「お城?」
「城は向こうだよ、こっちは金持ちの家的な洋館」
美来は後ろを振り向いて遠くに見える城に驚き歓声の声をもらす。
「おー、デカイ。立派」
すると、館の方から茶色い制服を着た三人の男女が出てきてレゲインの前に立った。
「お? 誰かと思えば、そのピン。警備学校の子じゃん」
「あれ? 君の親戚居なかったっけ?」
「居たわね。けれど警備学校の子なんて才能の無い人の集まりよ」
見下されたように見られたレゲインは三人を睨みつけていた。バムがレゲインの腕を掴み落ち着かせようとする。
「げ、ゲレイン。こんな人達放っておこうよ」
「あ! ソテに似てる」
美来はオッドアイの髪を金髪に染め、黒いウザギ耳のカチューシャを首にかけた女性を指差す。
「本当だ……色合いはゲレインだけど。んっ!」
バムはレゲインから殺気を感じ息を詰まらせる。そこに口出しをしようとした女性を制するように頭に包帯を巻き、大刀を背負った男が口を開いた。
「早く戻らないと、一週間に一回は出席必須だって言われてるだろ」
「そうね……次会ったら貴方達の最後だからね」
そう言って髪を翻し三人は美来達の横を去っていく。
「そんな事したらそっちの方が命落とすんだからね!」
バムがさらに何か言う前にレゲインが腕を掴み黙らせた。
「余計な事すんな。今戦闘になったら面倒だろ」
それを聞いていた美来はレゲインの袖を引っ張る。
「殺し合いになるの? 何で?」
「お前な……学校同士でのいざこざは国が手を出したがらないんだよ。彼奴らとこっちは仲が悪いんだ」
「ふぇ〜」
何だその感心の仕方。当たり前のように殺し合いって出たなこいつ。




