保護者のような二人
シャンの行方を追っていたディールスは違和感を覚える。
「ナーゲル」
「何?」
「あの魔女、俺達が邪魔だったから殺そうとした? 追って来ない」
ナーゲルはディールスの話し方に少し顔を顰め後ろを見てみた。確かに魔女が追ってくる様子は無い。
ディールスの考え方で行くと、意外と手強くて殺すのを諦めたってことか?
「ディールス、あの方向に誰か居たか?」
「幽霊、ディネ、先生がその先に出てった」
ナーゲルは少し考え、ディールスの方を見てアイコンタクトを取る。ディールスは頷くと元の方へ走って行った。
美来とバム、その場にいた全員が音が止んだのが分かるとお互いに目を合わせた。
「キツネのやつとは思えねぇけど」
「レゲイン、それに確証は?」
「あ? お前何者だよ、あるわけねぇだろ」
つーか、楽しそーだな。エリオスだっけ? それはあの幽霊か……。
エリスンは常に涼しそうな笑顔をしていた。
こういう奴苦手だ。
さっきから小さく袖を引っ張られている事を思い出し、引っ張っている美来の方を見る。
「カクラン、大丈夫かな? 音の方とか人の気配する方、カクランが向かった方だよね?」
「気配? 美来、いつからそんな気配に過敏になったんだ?」
「分かんない」
だろーな。
「キツネは大丈夫だと思うけど?」
美来は袖を離さずに掴んだまま俯き、カクランが去って行った方を見る。その様子を見ていたソテは嘲笑った。
「警備学校の教師よ? しかも一クラス崩すぐらい強いのに殺られるはずないじゃないの」
それを励ましだと受け取った美来はソテを見て笑みを浮かべた。
「ありがとう」
「は、は!? わ、私何かお礼を言われるようなことしたの?」
励ますつもりは無くただ皮肉っただけにも関わらず励ましだと受け取られたと分かったソテは頬を赤らめていた。
「ソテさん、照れ隠しですか?」
「う、うるさいわよ!」
その様子を見たバムとレゲインは思わず表情を緩ませる。偶然二人の目が合うと直ぐに真顔に戻った。
大きな音はハンカ国の端の方にいるカクランたちにも聞こえていた。それでも駆けつけようか迷っているカクランを見かねた魔女は出て行かざるを得なかった。
「あ、あなた達!」
「あ?」
突然出てきた魔女はルウブに睨みつけられ恐縮してしまった。
「ひっ! こ、殺さないでごめんなさい!!」
呆れた目で見てくるカクランをルウブは普段の目で見る。デセレス王が二人の横に並ぶ。
「俺を差し置いて何三人で話を終えさせ用としてんだ?」
「無能王は引っ込んでろ」
「聞き捨てならないぞ、ルウブ」
こんな状況で睨み合いを始める二人と、魔女のくせに怯えている女性を見たカクランは苦笑いをする。
だめだこりゃあ。緊迫してるはずなのに。
「それで、君は僕らに何の用かな?」
「う、え、えと……ち、力尽くであなたにはこの国の外にで、出てもらいます!!」
「……僕? 何かあるのかな?」
気の弱い魔女はあたふたしながら答えを探した。
ディネが振り向いた方向からは草をかき分け蔓が伸びてきた。
「ディネ!」
自分に向かってきた蔓に、ディネは耳当てを付け動物の姿へ変わり蔓を避け上に乗り走る。
あぁ、なるほど。ティーアンとしての動物の脚力も利用するタイプなんだな。ディネは。
蔓からジャンプをし気の幹を蹴り、反対側の地面に着地をする。そのまま人の姿に戻った。
「ディネ、ディネ」
カクランの方を見に行っていたはずのインコがディネの頭の上を旋回している。
「魔女、来た、来た」
「何処を見に行ってたの? 先生の方に行ってないだろ? 全く、インコの癖に心配しないでよ」
何食わぬ顔でディネの肩へと着地する。
性に合わない。ぼくは遠距離でしか戦えないっていうのに。
目の前を横断する蔓を手繰る様に魔女が歩いてきた。ディネは戦闘を覚悟し、拳銃を二つ取り出した。
魔女が目の前に来るとディネの方を向いた。
「見つけた……名前、長い奴」
「ーー!!」
ディネはそこでようやく蔓に周りを包囲されてしまった事に気がついた。
「ディネ!! 逃げろ! 君じゃあ魔女には勝てない!」
ーードンッ!




