寄生虫
美来とレゲインはバムの説教を苦笑いをしながら受けていた。
「狐とかは危ない寄生虫とか持ってるかもしれないんだから、無闇に触ったら駄目だよ! 大体ゲレインついてたくせに何してるの? 気をつけてよね!」
やっちまったなと美来とレゲインが笑い合ったのを見たバムは二人の間の地面を思いっきり踏みつけた。
「聞いてるの!?」
美来とレゲインは危険を感じバムの方を向いた。
「ご、ごめん……」
「す、すみません」
その光景を遠くから見ていたカクランは苦笑していた。
怖え……ティーアンでよかった。野生の動物とか見るとつくづく思うよな、ティーアンでよかったって。
ソテ達の班を見ると兎を食べていた。ほぼ共食い状態だ。
「ん、美味そう……僕はしばらくコンビニで買った弁当だけどな。自炊できない」
コンビニ弁当も充分に美味しいはずだ。
木に座りまた今朝の事を思い出し気が重くなる。
実習授業の前の日、カクランは一足先に和風の建物が立ち並び真新しい黒いコンクリートの道が伸びた江国に来ていた。
「金はカク持ちだからな、オレはぜってー払わねぇぞ」
「はいはい、誘ったのは僕だし構わないよ」
無理やり飲みに誘われたルウブはいつもの調子で無表情だった。周りから見れば嫌々そうに着いてきているようにも思えただろう。
ルウブの奴、少し照れ隠ししてるよな、本当は嬉しいくせに。
カクランは一人笑っていると、それに気がついたルウブに睨まれた。ただ、誘った先の店に着いた時には更に睨まれた。
「てめぇな……何でオレ誘ってキャバクラに連れてくるんだよ」
これは流石に嫌だったらしい。
「駄目だったの?」
だが、中に入るとカクランは客だというのに一人しか付かなかった。すぐ横を見ると囲まれても無表情で酒と水を交互に飲むルウブがいた。
あはは……連れてきて正解。三人も四人もに接客されたら有り金全部そこを尽くしね。けど、いーのかな? 他のお客さん居るのにルウブだけに着いて……。
他の席からは行きたくても行けない女性と人が減らされた客の睨んだ目がルウブに向けられていた。
「やばっ……」
唯一の救いは自分に着いていた女性は自分の相手をしていても良いと思ってもらえている事ぐらいだ。
「これとかどーですかぁ?」
「うん、いただくよ」
カクランがそう優しく微笑みかけると何故か顔を赤くして背けられてしまった。
何だろう、この店をホストクラブにしてしまった気分は……。逆だろ! 店員がキャッキャしちゃ駄目だろ。
翌日、カクランは布団で目を覚ました。
だが、何かがおかしい。アルコールに強い方のカクランは普段なら昨晩のこの宿へ来るまでの道程を覚えているはずが全く思い出せないのだ。
まだ冴えない頭を抱え起き上がると更に違和感に襲われた。
「あれ……なんで……ぇえ!」
すぐ隣で寝ている者を見てカクランは青ざめる。目を逸らし一旦冷静になろうとするが、混乱し過ぎて無駄だった。
「ぁあ、おはよう……」
寝ていたそれが起き、声を掛けるのでカクランは驚いて側にある布団カバーを引っ張り壁際まで逃げた。
「は! え? き、君……誰?」
混乱する頭で目の前の布団で見えないが自分と同じく全裸であろう女性の事を思い出そうとする。
女性は不思議そうに首を傾げ女の子のように隠して驚いているカクランを見た。
あり得ない、あり得ない! 僕が酒に負けて一晩の過ちを犯すなんて! って、これは偏見だな。そんな欲に振り回されたことなんて一回も無いのに。
「あ、えっと、き、昨日の夜何かあったのかな?」
「はぁ……? それは、何かの確認?」
やめろー! 何もなかったって言ってくれよ! 僕は何もしてない! はい、解決だろ!?
「ぼ、僕、君に何かしたかな?」
「口説かれました」
「うん、それはいつもの事だね。その先」
「き、聞くんですか?」
カクランは頭を抱える。
「や、やっぱ良いわ、言うな。取り敢えず目瞑ってるから服着てくれないかな?」
「瞑らなくても良いですよ?」
黙れ! 更に悪い方向に確信させるな!! っても、物的証拠も何もねぇし。僕、何もしてないよね?
その後、服を着て髪を整え廊下に出てルウブに連絡を取る。
『昨晩何があったか? あ〜、お前、薬盛られてるなってぐらいなら覚えてるけど』
「あ、相変わらず弱いね……は!? 薬!?」
『とうとう意地でも捨てたのか? 卒業的な?』
「無性にルウブを殴りたい。僕が好きでも無い相手にそこまでするはず無いだろ? ってか薬盛られてるって知ってたなら止めてよ」
心の中でざまぁと笑っているルウブの声がまだ頭に残っていた。
「女性って怖い。どうしよう、責任取れって言われたら」
何かあった時の為にお互いに携帯の番号を書いた紙を確認して携帯に登録する。いつもならまた増えたと喜ぶ所だが、今は喜べない。




