劣等感
ルウブはベットの上で気を失っている美来を覗き込む。その様子を見ていたレゲインはルウブの口元が少し紅くなっている事に気がつく。
「何かあったんですか?」
「軽い大事件に巻き込まれただけだ気にすんな」
軽い大事件って軽くねぇじゃん。事件って何があったんだ?
美来の頬を涙が伝ったこと以外異変が無いことを確認したルウブは椅子に腰掛けた。
「確か今は予知夢だけだよな?」
レゲインはルウブの問いに頷いた。
それが鮮明になってたらまずいな、確実に魔女かなんかの手が加えられてる。チッ、カクの奴がこんな所に居なけりゃあオレは関係ねぇのに。
「魔女かケイヴ帝国か。レゲイン、ドラゴンが有能だと思うなよ? できねぇことだってあるんだ、オレより別の奴頼った方がいいと思うけどな」
「できないこと?」
レゲインが聞くとルウブはただ目の端でレゲインを見るだけだった。
その日はカクランが他の班の依頼に同行しており実技はイロカが行っていた。個々でのトレーニングでそれぞれいつものグループに分かれる。
バムはレゲインに殴りかかる。レゲインは両手で上流し続けていた。
「ねぇ、避ける練習してるわけじゃないんだからさ、反撃してよ」
「体術なんて霊力と魔力に対抗できるのか?」
「はっ!!」
バムが顔めがけて回し蹴りを放った。突然のことにレゲインはかがみ避けることはできたが直ぐ横の壁にヒビが入った。
「あっぶね! お前、まだ怒ってんのか?」
「当たり前じゃん」
美来はその様子を壁際で膝を立てて座り見ていた。さっきイロカに指示をされ手合わせした相手に殴られた腕がまだ痛い。
バムとレゲインって私達と居るから弱い風に見られてるんじゃないかな……。
まだ薄っすらと覚えているバム、レゲインの他の生徒との手合わせを思い出す。誰とやらせてもバムが相手を投げ倒すの光景と、レゲインが殆どの相手の攻撃を受け流すのを見て悔しがるイロカがいた。
「ん……」
少し苦しい気持ちでいると直ぐ横に八班のピンを髪につけた女子生徒が腰掛けた。
「班員が優秀だと劣等感感じずにはいられないよね」
「えっ?」
「私なんて戦力外で置いてきぼりだよ。班長が先生を押し切って私の代わりに先生連れて依頼に行っちゃったんだ」
仕方ないというように天井を見上げる彼女を美来は不思議そうに見ていた。
なんで笑ってるんだろ? この人、辞めるのかな……。そうか、私はこの人みたいに逃げられないんだ。
バムは全く相手にしてくれないレゲインに嫌気がさし殴る振りをし腕を掴み遠くに投げ飛ばしてしまった。
「はぁ!?」
驚くレゲインの声の後に壁のクッションにぶつかり床に落ちる大きな音が響いた。
「美来ちゃん、ゲレイン相手してくれないから代わりに手合わせして?」
「えっ!? 私じゃ無理だと思うけど……」
美来の予想通り手加減の仕方を知らないバムとの手合わせは一方的な暴力のような形になった。
吹き飛ばされた時は壁にぶつかるギリギリの所でレゲインに助けられ床に降りる。
「お前な、手加減って言葉を知らねぇのかよ? 美来なんかがお前のパンチ喰らったら痛いだけじゃすまねぇだろ」
「手加減? してるつもりだけど……」
レゲインは美来の手首を掴みバムに腕が見えるようにする。二の腕に少し痣ができていた。
「あ、美来ちゃん。ごめん」
「殺す気かよ」
美来は呆れた様子のレゲインと反省の色を表に出さないバムを見る。
私が弱くても何も言わないし二人とも優しいなぁ〜。
にやけている美来に気がついた二人は見ているのに気がつくまで美来を見ていた。
「な、何?」
「美来ちゃんにやけてたから」
「何にやけてんだ?」
にやけていたことに気がついた美来は口元を手で押さえ頬を赤くする。
「真剣にやらないとあんたら死ぬよ!」
真後ろから聞こえたイロカの声にバムと美来は息を詰まらせた。
「来年にはクラスの三分の一、良くて一が命を落とし三年になる頃には一年の頃の三分の一まで減るのが普通なんだよ。あのティーアン擬きから聞かなかったの!?」
美来は首をかしげる。聞いていないのだから一ミリも思い出せなくて当たり前だった。
「んー? 私は覚えてないよ」
「聞いてねぇからな」
その答えに驚愕しているイロカを他所に午前の授業終了のチャイムが鳴り響いた。
美来はバムの付き添いで保健室へ行き腕を治して自分の部屋に戻った。
「うわぁあ!?」
美来は自分の部屋のベットの上を見て腰を抜かした。鍵が掛かっていたというのにルウブが入り込み、布団の上でぐっすり熟睡しているからだ。
「ひ、人の布団に何てことを」
ベットに手をつき顔を見る。
「カクランじゃない」
耳でしか判断できないけど。口開いてるけど、布団と枕大丈夫そうだね。にしても何で暑い季節で部屋なのに上着とかマフラーとか取らないのかな。汗かいてるし。
「ヒッククシュンッ!」
寒気を感じクーラーを確認するが付いていない。




