無断退院した理由
バムは一人部屋でパンダの人形を抱きしめて座っていた。
「美来ちゃん、ゲレインと仲良いな……そのうち私のことなんて……」
アルバムを取り出し写真を見る。故郷で撮ったものだ、昔の親友と一緒に自分も写っている。
色あせた写真を見つめる。
「それで、明後日ぐらいに今日までの所のテストやるらしいから。まぁ、大丈夫だろうけど、今日は終わりな」
カクランがそう言うとみんな散っていった。
「美来ちゃん大丈夫?」
「えっ!? えっと、いや、どうだろ、こういう場で聞いたものって全く頭に入らないから……」
「三種類の石さえ覚えてれば大丈夫だよ多分」
「ふぇっ!? ま、魔石と霊石、想像石だっけ……?」
美来は不安気に指をおって数えながら言う。
「じゃあその特性は?」
「……ぁ、覚えてない」
バムはニコニコ笑いさらに聞く。
「それじゃあ、魔物を寄せ付ける薬品は?」
美来は目が回り始めたのか頭を抱える。
「ううぅ……ど、どうしようバム、私全く覚えてない」
「美来ちゃん? 薬品は一回もやってないよ」
「へっ!? バム!? もぉ……」
すると扉の方からガタッと音がした。
「ねぇ、そこに誰かいなかった?」
「うん、今、音したよね? ゲレインでも覗いてたのかな?」
「えっ……まだ入院中じゃ?」
レゲインはぼーっと窓の外を見ていた。
「薄暗いな、明日は雨かな」
そして開いて持っている本に目を移す。
いつもはバムと美来がいるから騒がしいのか……。あれ? 今度テストじゃなかったっけ? 美来の奴大丈夫かよ?
ーーガラッ!
扉が開いたので美来とバムだと思い扉の方を見た。
「美来…あれっ…!」
だがそれは美来とバムではなくソテと黒髪で猫耳を着けた子だった。慌ててフードを被り俯く。
「初めまして、ソテです」
レゲインは全く反応しない。
「無視ですよ、ソテさん」
「んっ……レゲイン、美来とバムだと思ったでしょ?」
それでもやっぱり反応しない。
「ちょっと! 聞いてるの?だいたいフード被る意味ないじゃん! 反応して!」
するとレゲインは本を閉じソテを見る。
「聞いてるよ、何でわざわざ面識のない奴のどうでもいい話に反応しねぇといけねぇんだ?」
「っ……いいじゃんお話ししましょうよ? レゲインは、美来が好きなの?」
また無視をして本を読みだす。
「別に。てか、俺に触るな……そんな事話す筋合いはねぇよ」
そう言ってくっついて座っているソテを押し離す。
「あら、そうねぇ模擬戦の事知ってる?」
「ソテさん、知ってますよ」
「んっ……あ、あのね貴方に言ったわけじゃないよ? レゲインに言ったんだよ」
レゲインは本を見たまま答える。
「知ってる」
「その時を楽しみにしてるのね! あなた達を一ヶ月ぐらい動けなくしてあげるわ」
「あっそう」
全くの無関心だ。ソテはそれが気にくわないのかイラっとして出て行った。黒髪の猫耳も追っていく。
模擬戦ってどんな感じだったっけ? 確か、トーナメント制で一対一とチーム戦をやるんだっけ? まぁ、いっか……
そこへ、今度は美来が一人で入ってきた
「あれっ……」
「どうしたんだよ?」
「え、いや、バムの様子がおかしくて目を離したら私一人になっててここにいるのかなと……」
「バムは来てねぇぞ」
「そっか、どこ行っちゃったんだろ」
美来は困った様に頭をかく。
「レゲイン? 誰か来てたの?」
「なんで分かったんだ?」
「だって、フード被ってるから。ほら、レゲインバムと私以外の前ではフード被るじゃん」
レゲインはフードを外した。
「てか、バムが単独でどっか行くって珍しいな、喧嘩でもしたのかよ?」
「してないけど、ため息をつき始めて何か……私何か言ったかな!?」
「い、いや、俺に聞かれても……分かんねぇよ」
てか、何で俺が相談受けてんだ?
「探した方が良いかな? 寮にも居ないし」
どんだけ一人が嫌なんだよ!? 寮まで探しに行ってこっちまで来るとか。
「夜にはさすがに戻ってくるだろ」
美来は椅子に座る。疲れたのだろう、大きく息をした。
「フフフッこれで良いかしら?」
アリアの問いにその人は頷く
「じゃあ、契約成立ね望み通り能力が加算される……」
美来は一人で机の前に座り夕食を食べる。バム……どこ行っちゃったんだろ?
結局夕食までに戻って来ず美来は一人だった。すると目の前に誰かが座る。美来は顔を上げてみるとフードを被ったレゲインだった。
「えっ!? レゲイン、入院してたんじゃ?」
「病室でごろごろしてるの飽きたから、ヤギの奴を言いくるめて退院してきたんだよ」
「怪我は大丈夫なの?」
レゲインは口に入れたものをお茶で流し込む。
「あのよ、人のことそこまで心配する奴お前ぐらいだぞ、こういう時の反応は大抵"ふ〜ん"で済まされるものだぞ」
「えっ……友達なのに? そこまで心配しないの?」
「しねぇな、多分……俺の場合ここまで長続きしたのは初めてだし、よく考えてみろよ、皆んな半分は動物だぞ?」
美来は周りを見た。
確かに、人間の姿と理性のある動物かもしれない。
「動物が、一々死んでった群の仲間を気にしてたら自分まで死ぬぞ? だから、相手の死は自分の危険を察知するためのものとしてしか認識されねぇんだよ」
レゲインは結構酷いことを言っている気がする。でもその通りの事を言っている。
ただ美来は全員が皆そういうわけじゃないのでは? と思っていた。
じゃあ、バムが行方不明な事も何とも思わないのかな?
私は、凄く心配だよ? レゲイン。




