そこだけ器用
体調の良くなった美来は病室で見舞いの品として貰ったクッキーを食べていた。
「このクッキー高いやつだよね?」
「紅茶飲まされずに済んだ礼だよ、紅茶が好きなバム自信が飲みゃあいいのによ」
美来は何となく聞き流したが、ふと気がつきクッキーを食べる手を止めた。
「えっ!? バムって紅茶が好きだったの!?」
「知らなかったのかよ」
「……レゲイン器用だね」
皿の上には兎など様々な形をしたリンゴが並べられていく。
あはは……誰が食べるんだろ。食べるのも勿体無いし。
「他にも何かできるの?」
「リンゴしか無理」
何でそこを極めたの!?
レゲインはリンゴをむき終わりナイフを消し、美来の手を取り無石を置く。
「昨日みたいなことがあったら直ぐ離せよ」
「うん……」
「どうかしたのかよ? また変な夢でも見たか?」
美来は首を横に振る。レゲインは俯いている美来を見て気分が悪い。
バムと喧嘩でもしたのか? いや、今朝の朝食でもあいつはそんな素振り……駄目だ、意外とそういう事表に出ねぇ奴だったな。
「喧……」
「喧嘩とかじゃないよ、バムとは昨日会ったきりだから今日はまだ」
読心術でも身につけたのか!? まだ最後まで言ってねぇのに。
「じゃあ何だよ?」
「その、レゲインは私達と行動するの縛られてるみたいで嫌?」
レゲインはフォークで兎のリンゴの頭を突き刺し丸ごと口に入れた。
何でそういうところだけずぼらなんだろ。
「それってお前が思った事か? それとも誰かに言われた事?」
「自分」
「ふ〜ん」
レゲインは少し間を空け口の中のリンゴを飲み込んだ後美来を見る。
「息抜きだ」
「息抜き?」
「此処に来る前は全くって言っていい程人と関わった事がねぇんだぞ? 親ともな。そんな奴がいきなり四六時中人と居てみろよ初めは良いけど流石に疲れるぞ」
「えっ? じゃあ寧ろ三人でいて楽しいって思ってたの?」
目を輝かせて見てくる美来を見たレゲインはフォークを咥え、もう一つのフォークでリンゴを刺し美来の口に丸ごと押し込んだ。
「グフッ……」
「そうかもな」
美来は窒息しそうになりながらも両手で口を覆いリンゴを何とか噛み砕く。
良かった、って事はどこか行ったりしないって事だよね。リンゴの汁が飲み込めない。
カクランがノックも無しに入ってくると二人を茶化す。
「あ、僕邪魔だったかな?」
「黙れ女好き、大会中に女で遊びやがって」
「えっ! レゲイン見てたのか!? 人聞き悪いなぁ。アレはいつも通りキスしただけ」
美来は解読不能な言葉でカクランの行為に批判を言った。
「美来、飲み込んでから言おうか。それで、クラス一位に入ったレゲインさん? 欲しいもの一つだけ学校から貰えるよ」
「じゃあグループルームにエアコン」
ルウブは氷でできた町の中、巨大な白い毛の生えた生物の死体の前で血の付いた槍をしまった。
「ルウブ、どうしますか? 討伐したとは言え建物崩れてますよ」
「氷でできてんだ、直すなんてオレでなくてもお前らだって簡単だろ」
青い髪をし青い黒の縦線の入った目をした二人は顔を合わせて苦笑した。
「全く、こっちはルウブより魔力が少ないせいで戦闘にも苦戦したというのに」
「掟、命令は種族が危険だと判断されない限り基本絶対。リーダーの命令だよ、直すぞ」
「へいへい、氷出すだけだしな」
ルウブは仕方なく建物を直しにかかる二人を確認する。
別にオレは命令したわけじゃねぇのにな、勘違いもは甚だしい。この魔物の死体どうするかな。
背後から魔女の気配を感じたルウブはとっさに振り返る。
「っ! 気のせいか?」
気のせい? オレが魔女の気配を間違えるなんて一回も無かったのにな。
疑問を払うように一息吐き顔を上げた。その先にはケイヴ帝国の奴隷服を着た少女と軍の服を着た男が歩いているのが見えた。
「何で、ケイヴ帝国の奴らが……!」




