頭に響く悲鳴
ディネは植木の影で呆れた目でカクランを見ていた。エリオスは懐かしいものを見るように緩んだ表情をしている。
「いやぁ、カクランも変わらないところがあって安心したよ」
「安心していいことじゃない気がするんだけどな……ぼくは」
きっと美来達三人は一回もカクランがあんな事してるの見たことないんだろうな。
周りがザワザワと騒がしい音が聞こえてきた。
「何かあったのかな?」
エリオスにつられディネも後ろを向く。
カクランは相手の肩を掴んだまま身を離し周りを見る。カクランからさっきまで女性に向けていた笑顔が消えた。
「あの……えっと」
女性が不安そうに見ているのに気がつきカクランは相手に向き直り肩から手を離す。笑顔を戻し人差し指を立て口の前に持ってくる。
「ごめんね、キスより先はしない事にしてるんだ」
「えっ?」
「用事が出来たから機会があればまたね」
「エリオス、あいつの何が変わらないの?」
「守備範囲広い所とか? 女の子なら何歳でもいいみたいだよ?」
「あっそう……ただの女たらしじゃん」
「ほら、でもちゃんと見境いはつけてるよ? お、幼い子に口にしたりしないし……」
途中で言葉を止めた所を見ると弁解の余地がない事が分かったようだ。ドン引きしているディネを見て得意げな顔をしたまま目が涙ぐんでいる。
「エリオス、カクラン消えたよ」
「えっ!?」
見るとがっかりしている女性だけしかいない。
カクランは騒ついている店街に来た。周りには頭を押さえて苦しんでいる者や意識を失っている者がちらほら居た。
「何が……」
倒れてるのは生徒だけじゃないのか。
「先生! 美来ちゃんが」
カクランに気がついたバムがうずくまる美来の側からカクランを呼んでいた。
「何があった?」
「分からないよ、だって急に苦しみ出すんだもん。そしたら他にも倒れる人がいるし」
「美来」
美来は痛みに耐えながらカクランを目で確認する。美来を見渡してカクランは想像石を持っている事に気がつく。
まさか……理由は分かんないけどそれのせいか?
美来を抱え服のポケットから石を探り出した。
「っ!」
触れた瞬間に伝わった頭の痛みに石から手を離した。二つの石は地面に転がる。
抱えられた美来は痛みが止まりさっきまでままならなかった息を補うように大きく深呼吸を繰り返している。目を開け抱えているカクランを見る。
「ふぅ……美来は大丈夫みたいだね」
「美来ちゃん、大丈夫?」
「まだ頭が痛い、気持ち悪い」
カクランは美来を見てホッとする。 石の光が収まったのを確認して拾い上げポケットにしまった。
「保健室に行こうか、一応見てもらったほうがいい」
バムがそれに頷くとカクランは美来を抱えたまま立ち上がった。
「うっ……」
レゲインは気持ち悪さに耐えながら立ち上がる。
酔ったみたいな感覚だよな……。
光が消えたペンダントを拾い店街の方に向かおうとする。
「レゲイン? ねぇ、外してよ」
「元からか外せてんだろ?」
ツノメの方を一切見ずに立ち去った。
医療館の中はいつになくバタバタしていた。いつもは見ない看護師まで運ばれてくる人に対応していた。
「あはは、逆井さんは軽度でよかったねぇ〜皆んな気を失っちゃってて原因すらわからないよ〜」
「原因はこれだよ、想像源とかから多少は分かるだろ」
カクランはいつも通りわざとらしく笑うヤギに美来が持っていた想像石を渡した。
「ん? ただの想像石じゃないか?」
「ただの想像石が、頭に響く悲鳴みてぇな感覚を伝えやがったんだよ」
バムとカクラン、ヤギにベットに横たわっている美来、が突然開いた扉の方を見るとレゲインが病室に入ってきていた。
「ゲレイン、なんで来たの?」
「来ちゃあ悪いかよ? 美来が倒れてんのが見えたんだよ。まだ気持ち悪いし」
「何で?」
レゲインはバムの疑問に手に持っていたペンダントを前に垂らす。バムが分かったという顔をした後ペンダントをしまいヤギの手から想像石を取った。
「レゲインちゃん?」
「想像石なら別の倒れた奴のがあるだろ」
「ぁ、まぁ確かにね」




