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まだ動けない

「何か文句でも……」

男は手でバムの言葉を制した。

「いいや、無い。失礼、遅れたが自己紹介をしておこう。私はマッドドラゴンのリーダーボルボロス・オー」

しばらく沈黙が続く。するとボルボロスは腕を組んだまま睨むようにバムと美来を見下ろした。

「あ、えっと私はバムです。こっちは美来ちゃん、倒れてるのがゲレイン、そっちがディネ」

「ああ、悪かった。別に君らを睨むつもりなんて無いんだ。若者が多いからな、接し方が分からん。ドラゴンにも若者が増えたものだ」

「はぁ……? ボロボロスさんは何でメランを……」

「ボルボロスだ。それは、まぁ、種族を跨いだ仇みたいなものだな。アレがいなければブリザードラゴンのリーダーも苦労が減ったろうに」

美来とバムはボルボロスを見上げていた。するとレゲインが目を覚ましバムの膝の上にいることに気がついた。

勢いよく起き上がったお陰でバムはレゲインの頭のアッパーをもろに食らってしまった。

「バム!?」

「君!? 大丈夫か!?」

レゲインは伸びているバムに駆け寄ろうとしたボルボロスを手で止める。

「何だね?」

自分の頭を指差し美来を指差す。そして自分を親指で指を差し両手を合わせる。ボルボロスにはそれで通じたようだ。

「頼みごと? 魔女から頼みごとなど……」

もう一度手で制すると紙を取り出した。紙の上には小さな魔法陣が現れその上に氷の華の華紋章が現れた。そしてまた自分を指差す。

「分かった、それで何を頼まれれば良いのかね?」

バムのポケットから写真と竹串を取り出し串を刺すと実体化することを身振り手振りで伝え渡す。その後に依頼書を渡した。

「分かった、その様子だとケイヴ帝国の奴らには敵わないだろう。責任を持って渡しておく気をつけて帰るんだな」

ボルボロスはそう言って手を軽く振り森の出口に向かう。

「痛たっ……」

バムは顎と頭を摩りながら起き上がる。

エリオスはボルボロスとすれ違いながら出て行こうとした。

「死者は生者とずっと居られると思うなよ」

一瞬ボルボロスの言葉に固まり直ぐに美来達のところへ行った。

美来はレゲインの顔を不思議そうに覗き込む。

「ねぇ、何でレゲイン話さないの?」

レゲインは首を振る。

「話さないんじゃなくて話せないんだよ、ゲレインまだ毒抜けてないんでしょ?」

バムの問いかけに頷いた。ディネは立ち上がり美来達のところへ行く。

「帰るんだよね? 依頼はあのドラゴンに頼んだんだよね?」

「ゲレイン勝手な……」

レゲインはただバムを見ているだけだ。

帰るということでレゲインを除いて立ち上がった。そのまま歩き出すが一人付いてこないのに気がついて振り向く。

さっきまでのところにレゲインだけ座り込んだままこちらを見ていた。

「バム、レゲインまだ歩けないんじゃないの?」

「まさか、だって私にずっつきアッパー食らわせたんだよ?」

「上半身だけ動かせたんじゃないのかい? 私は幽霊だから持ち上げられないからね」

「ぼくも、身長的に無理だから」

必然的にバムがレゲインをおぶることになってしまった。レゲインは何も言えなかったがおぶられている時は少し不服そうだった。



「レゲイン、明後日までに退院しないとこの病室でリンチされるよ?」

「!?」

見舞いに来ていたバムがまともに自分の名前を呼んだ事に驚く。レゲインはバムを振り向かせると片足だけ動くようになったことを教える。

「もう片方動かないじゃん」

レゲインはむすっとして腕を組む。

くそっ、言い返せないのがムカつくな。喋れる事には喋れるんだけどな。そう言えば美来は……?

「美来ちゃんならお使いだよ? ゲレインのお見舞いの品を買ってくるように頼んだんだ」

レゲインは嫌な顔をしてバムを見る。

こいつ、絶対悪巧みしてやがる。美来をお使いに行かせるとか何の番組だよ。

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