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美来の記憶力

霊呪縛府(れいじゅばくふ)

その声と同時に美来達に近い兵が黄緑の光の紐に絡め取られ動きが止められた。少し離れた兵が撃った針がほぼ動きを止められた前方の兵に突き刺さる。

「なにっ! お前ら……!」

男のすぐ横を銃弾が掠った。驚いて一瞬止まっている間に動ける兵は足を貫かれその場に倒れ込んでいた。

その間にバムはレゲインを担ぎ、美来と共に逃げる。背後からは兵などが混乱する声がざわざわと聞こえてきた。

「どうだった? 私の守霊術(しゅれいじゅつ)は」

突然流れるように追いついてきたエリオスをみたバムはこけそうになった。美来の横にはディネがいた。

「ディネの銃の正確さはすごいだろう?」

「言わなくていい」

エリオスに唐突に褒められたディネは照れ隠しをしている。

「ディネが銃打つの上手い事は覚えてるよ?」

「えっ……」

「えっ!? 美来ちゃん頭壊れた?」

ディネの驚き方は理解できる。一度しか見せていない照準の正確さを相手が覚えているのだから。けれど、バムの驚き方はひどい。

「ねぇ、記憶力無いけど覚えた事は覚えてるんだよ? 頭治ったって方が正確なんじゃ?」

「無い無い。美来ちゃんは忘れてる事の方が当たり前なんだから」

そういえば、美来ちゃん、人の情報は結構覚えやすい傾向なんだよね。ディネの事だし覚えててもおかしく無いのかな?

そうは思ったものの、レゲインがフードを取られるのを嫌がる事だけは覚えてないのを思い出し心の中で呆れた。

「そんな事より、ケイヴ帝国が何でこんなところに? 人喰いといい変な奴が多いね」

「ディネ、人喰いって?」

呟いたディネにバムが聞くとエリオスが答えた。

「黒いドラゴンさ、私とディネとでさっきの場所に行った時パンテルとあったんだよ」

「パンテル?」

首を傾げたバムに美来が答える。

「メランの事だよ、本名、パンテルらしいよ?」

人の名前に関してはしっかり覚えている美来に感心する。

「町に戻るんだろ? レゲインもその様子だし、依頼は済ませたのかい?」

「一応、死体なら見つけたし……!」

突然バム達の間を縫って人が飛び込み美来を押さえつけた。

「キャッ!」

「お前のせいだ! お前がいなければ俺はあの場であいつの体を手に入れられたんだ!」

美来り鉄の香りに顔をしかめる。顔を上げると口元や服を血に染めたメランの姿があった。

「うっ……」

「美来ちゃんっ!!」

美来に駆け寄ろうとしたバム、ディネはメランから伸びた黒い影に絡め取られてしまう。エリオスは美来を押さえたのがメランだと気がついた瞬間に物陰に隠れてしまった。

メランは美来の首を掴み何度も地面に叩きつける。

「ぐっはっ……」

美来は体も押さえつけられ首を抑える腕を掴むことしかできなかった。

「やめっ!」

「主人公が死なずに強くなるだけのものばかりじゃねーんだよ! お前はここで」

その先を言うことはなく、メランは泥水のような物に押し流されていった。

「ケホッ……」

美来は首をさすりメランが飛ばされた方を見る。

そのメランを追いかけ足で潰すように上からルウブより一回り大きな泥色の鱗をしたドラゴンが降り立った。

「ようやく見つけたぞ、ブラックドラゴン。貴様には色々と恨みがあるからな」

ドラゴンの声は周りに響きやすく地面を揺らした。足元ではなく木の上を見上げる。

「あら、マッドドラゴンとはね。全く、これなら私らは来なくても良かったじゃないの」

片手にメランを担いだヘルバは笑いながら逃げていった。

ドラゴンは人の姿へと変わる。

「っ……」

「美来ちゃん、大丈夫?」

「うん、多分。頭フラフラするけど」

バムは顔を上げた美来を見て少し心配になる。美来は頭から出血をしているようで顔の方まで流れてきていたのだ。

大丈夫かな? ただでさえ記憶力無いのに。

「珍しいな、人間とティーアンのコンビとは」

短髪でカイゼル髭の中年男性のようだった。目は木のような土のような色で真ん中に縦線が入っている。

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