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食べたい理由

「いって!」

ヤギがレゲインの手当てを乱暴にしている。

「いてじゃないよ〜レゲインちゃんが無理するからこうなってんだよ?」

その様子を美来とバムは呆れたように見ていた。

「美来ちゃん、何あれ……お母さん?」

「え? 違うよ? レゲインの知り合い何だってさ」

「知り合い? いなさそうだけど」

いなさそうって失礼だよ、バム。

「無理なんてしてねぇし」

レゲインはそっぽを向いてそう言うが表だけでなく体の内側まで怪我をしているらしい。

「怪我するなら体の表面だけにしてくれないかな?」

レゲインはむすっとしている。美来と目が合い目を逸らした。

あれ? 何か可愛いかも。

ヤギは点滴を点検して部屋の端に座りドロッとしたコーヒーを飲んでいる。何だか見ていると吐き気がするような物を飲んでいる気もする。

ベットに寝かされたレゲインはむすっとしたままだ。

「そう言えば、真空の魔女とか言ってたけどどういうの?」

美来は横の椅子に座りレゲインの方を見る。

「あ? ああ、魔女にも一人一人使う魔法に属性があるんだよ、ほら美来を殺そうとしたヘルバって奴あいつは、植物の中でも木限定を操れる魔女だ。そこから二つ名があってヘルバは、木の魔女だったかな」

すると笑うようにヤギが言う。

「ツリーウイッチだね〜あはは、あれ? 一時期レゲインちゃんにも二つ名がなかったっけ?確か――」

――ガツッ

答える前にレゲインの方から時計が飛んできてヤギの顔に当たった。

「それで、アイレの奴は空気を操って基本的に真空しか作れない魔女なんだけどな」

衝撃的な事が起きているのに平然と話を続けている。悶絶している人が居るというのに。

「でも、真空って破壊力ないんじゃないの?」

バムは美来をジッと見る。

「美来ちゃんって実はオカルトチックな事好きなの?」

「えっ!? あ……うん、ちょっとかまいたち的なのが気になって検索を」

レゲインはその事について話す。

「ここは、想像の世界なんだぞ……あり得ない事もあり得るんだよ」

「要は気にするなってことだよ美来ちゃん」

バムはそう言って美来の肩をポンと叩く。するとバムの方からカサッとビニールの音がした。

「バム、何持ってるの?」

するとバムは袋をレゲインの前の机の上に置く。

「えへへ、美味しそうだったから買ってきちゃった。美来ちゃん、一緒に食べよっか」

袋の中から箱を取り出しそれを開ける。レゲインが食べたがっていたフォンダンショコラだ、しかも三人分入っている。

「 いつ買ったんだよ! 俺の事引きずってたくせに」

レゲインはそれに手を伸ばす。

「ゲレインは要らないもんね先生食べますか?」

ヤギの方を見てバムはそう言うが美来が片手に持ってレゲインが食べる手伝いをしている。

「って、美来ちゃん……もー」

レゲインは使える片手でスプーンを持ち美味しそうに食べている。

「いや〜私は甘い物嫌いだから、あはは、バレンタインとかで友達にチョコをもらった後は困ってね〜」

バムは呆れた目で見て思った。

何故ヤギの先生が照れている……。

「バムの奴悪魔だな……」

「ゲレインに言われたくない」

するとヤギが気力の抜けたような笑みを浮かべる。

「逆井さ〜ん知ってる? 魔女ってね甘い物が大好きなんだよ」

ヤギがそう言うと何故かレゲインが噎せていた。

「ちょっレゲイン大丈夫!?」

美来は持っていた物を置き水を渡す。横で食べながら見ていたバムはからかった。

「アハハッ何か夫婦みたい」

「もう、バムも少しは心配してあげなよ」

「えっ? 言われてするものなのか? てか、一人で食える!」

レゲインはそう言って水を置き食べかけの物を側に寄せて自分で食べる。


 病室の外では扉の隙間からソテ達が覗いていた。

「ううっ……何で美来の奴なんともないの!」

「ソテさん……積み上がってこそストレスとして表に出るんですよ」

そう黒い猫耳を巻いた黒髪で毛糸玉を持った女が言う。

そんな事を言われても美来にストレスが溜まらないことがソテのストレスなのだ、先に参ってしまう。

「ヒックションッ!」

「ソテさん無理すると倒れますよ?」

ソテはマスクを取り鼻をかみ扉の隙間から美来を睨みつける。

「こ、こうなったのも美来のせいだよ!? クシュンッ」

「いや、美来さんのせいというか、あれは自業自得のような……私の忠告無視したじゃないですか」

この前、美来にぶつかり落とした資料を擦りその後、森に行き木の上に隠そうとしたが手を滑らせあるキノコの上に落ちてしまい思いっきりその胞子を浴びてしまって今、風邪のような状況が出ているのだ。

「その下危ないのでやめた方がいいって言ったのに」

そんな話は無視して病室を覗き続ける。

「クシュンッ! にしても、根暗だと思ってたレゲイン素顔意外と…….」

 黒髪の女もソテの下から覗く。

「あ、金髪ですね。それに、あの髪飾りコウモリのようですね、明るいですし」

「そうじゃなくて、かっこいくない?」

黒髪の女は呆れたようにソテを見る。

「それって根暗関係ないですよ?」

「それはいいの!」


「じゃあ、また明日ねレゲイン」

「ゲレインじゃあね〜」

美来とバムは寮へ帰っていった。

一人になったレゲインの病室にヤギが夕食を持って入ってきた。

「ほら〜夕食ですよ〜食べさせてあげるよ」

食べさせようとするのをレゲインは奪い取り自分で食べる。

「食えるってんの、つーかお前のせいで二人にバレるところだっただろ」

「あはは、気にし過ぎだよ〜鈍感だし、それに二人とも優しそうじゃんか」

ドロッとしたコーヒーを飲みながらそう言った。

「そりゃあ美来はこの世界のこと知らねぇし、バムは他の奴と同じで優しいだろうよ。意外と人間って事も気にしねぇみたいだしけどな俺の場合は別に決まってんだろ、それにこないだみたいに二人共危ねぇし」



「オレの夕食!? あぁぁ……またかテンスラ」

テンスラはカクランの物を全て綺麗に食べてしまっていた。

「うまくなったなー美味しかったぜ」

カクランはとぼとぼと出口に向かう。

「学食食べてこよ……」


一階の食堂に行き美来達の横に座るニコニコしながら話しかける。

「やあ、二人共今日は、味噌カツだね」

「あ、カクラン。ねぇ、普段は何食べてるの?」

「ん? 僕? 普通に自炊してるよ、テンスラの奴に食われて食べる物がないんだよ」

バムは苦笑いをしている。

「追い出すか二人分作るかすればいいのに」確かにその通りだ。でも、そんなことをするような人には見えない。

「そんな面倒な事できるかよ。ましてや男に料理を振る舞うなんてできる事なら避けたいよ」

そういえば、カクランは女好きだったんだ。いや、女好きにも程があるよ?

「ん、あれ? レゲインの奴どうしたの?」

バムは得意げに答える。

「ゲレインはぁ~、女の子にボコボコにされて医療党に入院中でーす」

バム、事実はあってるよ。けど違った気がするんだけど。

「ちょっとアバウトすぎるよ?」

間に受けたかどうかは分からないがカクランは、笑いながら話す。

「何々? か失礼な事したの? この世界は怖いからね、おしとやかなのに力が強かったりするから」

間に受けている感がある。

「それで、盗賊かなにかにやられたのかな?」

いや、意外と勘がよかった間に受けてはいなかった。

「魔女に……私達動けなくてその間一人で」

「そっか……いや、魔女と遣り合って無事だったのが凄いな。あ、そういやあお君達が戻ってくる前にキノコの上に落ちて医療党送りになったやつがいてよ、そのそばにこんな資料があってけど、こないだ美来が届けてたやつじゃない?」

カクランはその紙を二枚机の上に出す。それを見てバムと美来は驚く。

「あー! ゲレインが書いたやつ」

「カクランこれって誰が持ってたの!?」

「ん? ソテが持ってたっぽいけど」

美来は紙を取る。

「拾ってくれたのかな……」

「そうかな? ソテーってそんなことしそうに見え無いけど」

「ソテだよ、人を見かけで判断しちゃダメって言われたけどなぁ」

バムは呆れたように前を向き残っている味噌汁を飲む。

「少なくとも人間じゃないけどね」

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