ディネの悩み
「あー、アレは触りたくねぇな」
「女子じゃないんだからゲレインが取りに行くべきでしょ?」
バムとレゲインは水の底に沈むふやけた死体を見る。
「あ? つーかお前のカメラ使えば取れるだろ?」
「水があるから無理だよ?」
レゲインは呆れたようにバムを見ると立ち上がり紙を取り出す。
「ゲイル」
魔法陣からロープが出てきて水の中に伸びる。レゲインは軽く引っ張ったりなどをしてロープを操作していた。ロープがピンと張る。
「っぐ……重っ」
ロープの先には死体がくるまっていた。
「これで写真に入れれるだろ?」
「あ、うん……何か現場検証してるみたい」
バムは死体をカメラで撮り写真の中にしまった。
「じゃあ戻ろうか」
「うん」
「って、ちょっと待てよ。ディネとエリオスと合流しねーといけねぇだろ?」
バムと美来は目を合わせる。二人とも忘れていたという顔だ。
「じ、じゃあ、探そうか」
「う、うん」
「何で嫌そうなんだよ」
走って逃げて行ったディネを木のそばで片膝を立てて座っているのを発見したエリオスは横から顔を覗き込む。
「うわっ!? 生きてたの?」
ディネは驚いて後ろに倒れかける。
「え、私は始めから死んでいるのだけど? 君が助けてくれたんだろう?」
「助けたっていうか無駄な足掻きだよ。普通の銃弾がこの森に入れる奴に効くはずないんだ」
座り直し両膝を抱える。
ぼくは皆んなとは違うんだ。魔力も霊力も弱いし。
拗ねたような顔をするディネを見たエリオスは首をかしげる。
「どうした?」
「運良く逃れられて付いてるね。君は」
「私が逃れられたのはディネのおかげだろう?」
ディネはそっぽを向く。
エリオスはディネの横に座った。
「な、何これ……」
血で染まった遺跡の前に美来たちは来ていた。
「差し詰め殺処分場か?」
「物騒なこと言わないでよね、ペットじゃないんだから」
「お前、あいつらが殺処分されたとは考えねぇのか」
呆れた口調で言われたバムはやめろという目でレゲインを見た。
レゲインとバムが睨み合っている中美来は周りをキョロキョロしていた。
あれ? 何か足音が……?
「ねぇ、足音が聞こえるんだけど」
「足音?」
「何も聞こえないよ?」
美来の言葉で二人とも表現が緩む。
何この二人、怖い。人間より人間のような……。
ーーキンッ!
「キャッ!?」
美来のすぐ横の石に麻酔銃の針が突き刺さった。
「あ、あ……バム」
震えながらバムの方を見ると袖に針が刺さっていて固まっていた。
「バム? 大丈夫か?」
「う、うん? 服に刺さっただけ」
周りの木の陰から変わった軍服を着た軍隊が現れる。軍の間から黄色のヘルメットをかぶった髪の長い男が現れる。
「君が美来か? そっちが……魔女」
レゲインは睨むようにその男を好戦的に見る。
「何で美来ちゃんのこと何で?」
「ああ、私らはケイヴ帝国の者だからだよ。被験体にした物を知らないはずないよね?」
美来は驚愕していた。
「ひ、被験体?」
「実験のモルモットのことだろ?」
「そ、それぐらい私でも知ってるよ!」
レゲインは普段の調子でからかうような事を美来に言ったが、からかったのかは定かではない。
「おや?」
相手の男は何かに気がついたのか周りを見渡している。男の目には兵の後ろで動く砂鉄が映っていた。その間に美来はバムとレゲインの横に立つ。
「ねぇ、ケイヴ帝国って?」
「独裁国家だよ、奴隷制度があるの」
ちらっとバムがこちらを向くとき焦っているような顔をしたレゲインが見えた。
「レゲインどう……し!」
ーーパンッ! パンッ!
「っ……!」
後ろに倒れるレゲインを見た美来は口を押さえ青ざめていた。
「ゲレイン! ちょっと貴方……」
「安心しなよ、麻酔銃だからね」
男は麻酔銃を肩に担ぐように持つ。
「ぐっくっ……」
「良くまだ意識があるね。魔女対策の針だからね君には防ぎきれなかったろ? 変な気を起こすからいけないんだ。魔女」
バムは意識朦朧とするレゲインに刺さった針を抜く。
「ゲレインっ」
「っ……」
レゲインはそのまま眠ってしまった。
うわー!! 戦力一人消えたよ! こ、こういう時どうすれば? 美来ちゃんは怯えてるし。んー、ゲレイン見捨てていいかな?
「それで君ら、ケイヴ帝国までついてきてくれるかな?」
バムが答えに困っていると美来が震えながら答えた。
「い、嫌です……」
「美来……ちゃん」




