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後悔先に立たず

「駄目だ、まだ足りない……腹が減った」

黒髪の男は遺跡跡の石の上に座って躊躇う事を忘れ肉にかぶりついた。石の足元には何体もの無傷の死体が転がっている。

今食らいついた物は生き絶えかけていたもので暖かい液体が鉄の匂いと一緒に周りに飛び散った。

飲まず食わずで何日も居ればこうなるのも当たり前だ。この体になってから味覚が変わったのもあるかもしれないが男は人肉を美味しく感じていた。

「フッ、ドラゴンが元は人の肉も食ってたってのが実証されたわけだ」

自分の末路を嘲笑した。


エリオスとディネは気まずい空気の中森を歩いていた。

「ね、ねぇ、ディネって言ったかな? 君は何で一人なのかな?」

「ぼくは……馴染めなかっただけ」

「成る程、美来に近づいたのも主人公ならって事なのかな? でも私と同じで今更突き入る隙がなかったわけか」

「君と一緒にするなよ! 君は死んでるんだろ? 反則にもほどがある」

「反則? 私はほぼ防御しかできないよ?」

ディネはそれ以上この話を続けようとはしなかった。

それどころではなかったのだ。何故自分が遠距離型の攻撃特化だという事を一瞬忘れてあの四人から離れて行動したのかを後悔していた。

「これで敵に出くわしたら逃げられるか?」

「私が援護してあげるよ」

無期待の目でエリオスを見た。

こんな幽霊に何ができるんだよ……。

ーーザッ!!

「っ!?」

突然黒い影のようなものがディネの足元に刺さった。その影をたどると目先の石の上で黒髪の男が立ち上がり首をダラっとしてこちらを見る。

「フハハッまたノコノコと喰われに来たかと思えば……エリオスじゃないか」

口元を拭いながら体ごとこちらを向いた。

「エリオス、惨めな姿になったもんのだね。死んだくせに死にきれずいつまでこの世を彷徨い続けるつもりだ?」

驚いていたディネは全く返事を返さないエリオスに気がつき振り返った。エリオスは眉間にしわを寄せ頭を抱えている。

「誰?」

「知らないのかよ!」

「ディネは知ってるのかい?」

「あんな人喰い知ってるわけないよ」

男は地面に降り立つと手に持っていた残りの肉片を口に放り込み吞み込む。

「あぁ、姿が違うから私だとは気がつかないか。言葉遣いも違うからか。二年前の黒豹って言えば分かるのか?」

「黒豹? ……! パンテル!」

「それで、そっちの君は?」

ディネが口を開こうとするとメランに手で制される。

「別にいい、君らはここまでなんだから。大丈夫痛みは無いさ……だって魂を喰らうだけなんだから」

メランがそう言い終わる時、危険を感じたディネは逃げ出そうとした。だが、メランは一瞬で目の前に来て手を伸ばす。

「くっ!」

「がっ!?」

前を見ると助けに入ろうとしたエリオスが首を掴まれ捕まっていた。

「エ……エリオスなんで、君は」

「お前馬鹿じゃねーの? 魂喰うって言ったのに捕まえられないわけないだろう?」

エリオスは意識的にメランをすり抜けようとするが無駄だった。

「っ……ディネ! 逃げろ!」

正気に戻ったディネは一瞬躊躇ったものの走って逃げ出した。

「ようやく死ねるね」

「これは死ぬんじゃない。君に喰われるって事は消滅するって事なんじゃないか?」

「クハハッ死ぬも消滅も同じ事だろ……」

メランがエリオスに喰らいつこうとした時。

ーードンッ! ドンッ!

二発の銃声が鳴り響きエリオスは解放された。頭を押さえてグラつくメランを見たエリオスは今起きた事を理解する。

私が霊だという事を利用して、私を通過させてメランに当てたのか……。ディネが?

「くっ……何だよ。貴様……」

エリオスはメランを見下ろしディネを追いかけて行った。

メランは額に傷をつけて止まった銃弾を指でえぐりだした。傷はすぐに綺麗にふさがる。

「ただの銃弾か」

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