バムへの隠し事
夜一時頃、ロビーに出てもバムに見つかることのない時間に部屋から出た美来はレゲインの部屋の前に来て携帯を鳴らす。
ーーガチャッ
「ふぁ〜はい……」
レゲインは珍しくTシャツを着て服の下から胸したらへんを軽く掻きながらドアを開けた。美来はその光景にポカンと突っ立っていた。
「あ? なんだよ……」
「え? いつもパジャマじゃん、今日はTシャツ?」
「……パジャマに半袖が無いんだ」
それに相槌を打つことなく美来は部屋に入る。机の上に置いてあるコールを見つけるとそれを持ち手で遊びだした。
「おい、俺のなんだけど。前の石出せよ」
レゲインは美来の前に無石を二、三個放り出し手を出す。美来はポケットから二個想像石を取り出して手の上に置いた。
「バムに言ってもいいんじゃね? あと想像石になるの早くなってねぇか?」
「私言いたくないって言ったっけ? 早くなったかは分かんない」
「言ったよ」
「じゃあ、多分バムに常にお世話になってるしこれ以上困らせたくないからかな?」
「俺はいいのかよ」
呆れたように見るレゲインを美来はキョトンとした顔で見た。
「無石が無限にあるわけじゃねーんだし、ルウブからは暴走は避けられないとか言われたんだけど?」
「暴走って?」
「知らね。狐にでも聞けばいいだろ」
この日は休みで雨も降っていて涼しいためグループルームに居た。
「ねぇ、美来ちゃん。昨日の夜どこ行ってたの?」
「へ?」
レゲインは気まずそうに本をめくる手を一瞬止めた。
「ちょっと目が覚めちゃったから美来ちゃんの部屋行ったら鍵閉まってたし、朝は開いてたし」
「昨日の夜……?」
「ゲレイン? 何か知ってるよね?」
レゲインは頬杖をついている手で口元を隠す。
「べ、別に……!」
自分の癖を知っている相手にそのまま反応したことに気がついて息を詰まらせる。バムはレゲインの前に身を乗り出した。
「別にって事は知ってるんでしょ!」
「…………」
「何か吹き込んでるの? それとも何か私だけに隠してるの?」
「お、俺は何も。つーか近い」
レゲインに顔を近づけ過ぎている事を指摘されバムは腰を下ろす。レゲインがホッとしたのもつかの間でいきなり目の前に下からエリオスが飛び出してきて椅子ごと倒れそうになった。
「ねぇ、聞いて欲しいんだ! 私はそれなりにクラスを探した……だけど。君がぼっちだと仮定して考えて欲しい、仲良くしたい相手が二、三ヶ月で友達との仲を築く。そこには何人たりとも付け入る隙は無い、時間の壁があるんだよ。悲しいだろ?」
「いや、何言いてぇか分からねぇし」
「つ・ま・り、私ははぐれ者って事だよ」
エリオスは肩を落とし机から離れる。
「何で? カクランって友達じゃないの?」
そう問いかけた美来の方を悲しそうに振り向いた。
「久しぶりに会った友達には自分との力量の差を見せつけられて虚しくなるんだよ? カクランの方が気まずいだろうし、何せ私を殺したんだからね」
人間関係とは心底難しい者だね。力量の差か……バム達とも別れたらまた会えるのかな?
「カクランは気にしない感じだけど、読んでみようか?」
「い、いいよ、呼ばないで。気まずいし」
助けようとした美来は困った様に肩をすぼめバムとレゲインを見る。バムはその意味がわからないのか体ごと首をかしげる。
「こういう問題はバムには重すぎだろ」
「私に重いって? そういう問題って?」
「お前、鈍感だし。人間関係拗らせたんだろ?」
「あぁ、成る程、確かに私は……鈍感ではないよ!?」
耳元で怒鳴られたレゲインは鬱陶しそうに耳をふさぐ。
「ぁあ!」
美来が何かを思いついたらしく指を鳴らし表情に明かりが射した。その珍しい美来の行動にバムとレゲイン、エリオスは黙って美来の方を見る。
「何か思いついたのかよ? 雪が降るな」
「何で私が思いつくと雪が降るの? そんな能力持ってたの!?」
「例えだよ」




