挙動の読めない二人
珍しくチャイム前に教室に来たカクランは空いている席の椅子に上着をかけ座って机の上に伸びていた。
「暑い……」
黒いシャツは長袖から半袖に変えていたが暑いものは暑い。チャイムさえ鳴ればクーラーがつく。
しばらくすると涼しい風が吹いてきた。目を開けると目の前で美来が扇いでいた。カクランは伸びている間に眠っていたようだ。
「何でここで寝てるの?」
「へ? ……僕寝てたの? この教室暑くて」
「うん、分かるけど私の席無い」
周りを見ると立っている生徒などがいるが席はそれぞれ物を置いて取ってある。
「でも、ディネが休んでるから一つ空いてるはずじゃ……えっ!?」
背後を振り向く過程で斜め後ろに座っているディネが見え驚きで目が覚めた。隣の席にはバム、後ろの席にはレゲインが座っている。
「お前ら、薄情だな……」
カクランは怠そうに机に手をついて立ち上がり上着を取る。その場を退いて美来に席を譲った。レゲインは何食わぬ顔で口を開く。
「そりゃあ、この場所取られて人衆の真ん中にやられたくねぇし」
「人衆の真ん中にやられたディネが伏せてるんだけど……」
カクランは呆れながらも上着を着て髪を軽く整える。
ーーキーンコーンカーンコーン……
チャイムが鳴るとカクランは面倒そうに教壇の前に行った。
「皆んな、話するから座って。聞かなくていいから静かにして」
聞かなくていいなら何のために黙るかは分からないがシーンとする。
「もうすぐクラス対抗のボール鬼って行事があって……一週間後かな? ルール説明は今しておくね。一回しかしないからな?」
美来は隣にいるバムを見る。バムは首を振った。この行事に関して知らないらしい。
「個人点とクラス点があって」
カクランは黒板に配点を書いていく。
一年・・・1ポイント
二年・・・2ポイント
二年・・・3ポイント
教師・・・10ポイント
同じクラス・・・個人点からマイナス2ポイント
「こんな感じだね」
ナーゲルが手を挙げて質問をする。
「担任も当てていいんですか?」
皆んなの目が獲物を見る目になっている。
「あ、えっ!?」
カクランは慌てて配点を書き足した。
担任・・・クラス点からマイナス3ポイント
「き、気をつけてね? 教師で担任の奴も参加だからね?」
さっきとは変わって皆んな邪魔者を見る目でカクランを見ている。
「酷いな、おい。僕だって10点の教師だよ? ボール投げるのは普通だけど、バウンド無しで当たれば入るんだから能力使うのもアリだからね?」
バムは美来の方に少し傾き耳打ちする。
「女子に手加減するのを疑われてるんだよ」
「クスッ……確かに」
バムと美来はお互いバレないよう小さく笑った。カクランはその話が聞こえていたのでげんなりとした目で二人を見ながら話を続ける。
「当日、開会式とか無しで寮から出た瞬間スタートだからね。学校休みだからね」
「ん? なんだシャンシャス」
「ボール鬼ってどういうルール? ボール投げるの?」
「フヒヒッ、シャンシャス。さっきまで眠っていた僕に聞くよりナーゲルに聞いたほうがいい!」
白と茶色の髪をして頭のてっぺんにアホ毛が一本、常にくの字のふざけた目をした男子生徒にシャンはルールを再確認する。犬鷲の兄弟の兄だ。
「あれぇ〜? ナーゲルはどこ行ったの? ふへへっシューネと話してるや」
美来達が教室から出て行こうと近くを通った時、初めて見たディネに目をつけたシャンが腕を引っ張った。
「うえっ!?」
「ねぇねぇ、初めましてシャンシャスだよ? 君は?」
「ちょっえっ? ぼ、ぼくは……待って! み、美来!? 皆んな置いてかないで!」
半泣き状態のディネは無視して出て行こうとする三人に手を伸ばして助けを求めた。
「あ、でもさ、バム。ディネ居ないと暑いグループルームに行かないといけないよ?」
美来のその一言にレゲインとバムは慌ててディネのヘルプに答えに行く。
二人ともシャンと犬鷲兄に捕まった。
「おうおう。蝙蝠のレゲインとパンダのバムじゃんか! 模擬戦の時はどーもっす〜」
レゲインとバム、ディネは挙動の読めないシャンと犬鷲兄に挟まれてげんなりとしている。
「「「悪魔の祭典だ……」」」
美来はただ入り口から眺めていた。




