軽い兄弟喧嘩
「そこは、この装備だろ?」
「ぼくは回復するからこっちの装備でいいよ、遠距離からの回復もできるから」
美来達三人はグループルームより格段に涼しいディネの家に来ていた。この場所はエアコンがあり、グループルームよりも広い為便利だ。
レゲインとディネは意外と気があう様で二人でゲームをやっている。
「男子ってよく分かんないね」
「元気なんだよ」
美来はバムがそう言うので二人を見る。
え、全然そう見えないよ?
レゲインはともかく、ディネは無気力にしかみえない。
「だって、活発な人と暗い人が仲良くしてるなんて女子じゃそう無いよ?」
「美来ちゃん、どのでその知識付けたの」
美来がディネとレゲインを見て少し寂しそうな目をしていたのを見たバムは、美来の腕にしがみつく。
「あの二人居なくたって私は美来ちゃんの味方だよ」
「えっ? う、うん」
更に抱きつこうとしたのは失敗だった。美来から防衛行為を受けたからだ。
ーードッ!
「ケホッ……美来ちゃん、容赦無い」
「ご、ごめん! つい……」
すると、美来の視界が突然妨げられた。
「キャッ!」
「誰だ?」
カクランの声だ。だが次の瞬間カクランは手を離して頭を押さえていた。カクランの後ろにはルウブが立ち殴った手を下ろしていた。
「立場考えろ、セクハラ教師」
「友達感覚も駄目なのかよ……」
「歳を考えろ」
「十八と十五だけど何か問題でも?」
ルウブはカクランを睨みつけた。睨んだのではなく呆れた目で見たつもりなのだろう。
その間にバムが口を割って入る。
「十五って、そういうの気にする歳だよ? それに先生は十八っても百年以上生きてるおじさんじゃん」
「はい? 身体的に若ければ僕は精神的に子供だよ?」
カクランはそこまで言い終えると背後からルウブに踏み倒されて床に這い蹲った。
「んな事はどーでもいい。レゲイン」
レゲインはルウブに呼ばれて顔を上げる。
「お前、マールス鉄について何か知らねぇか?」
「何も聞いてないです。何故、人と一緒に持っていくかも」
バムと美来はレゲインの言葉遣いを聞いて驚いていた。
「バム、レゲインが敬語使ってる」
「生意気小僧が敬語を」
「誰が生意気小僧だ!?」
レゲインの隣でディネが小さく飛び跳ねていた。
「レゲインいきなり横で大声出さないでよ」
「わ、悪りぃ……」
本当は謝りたくないのかムスッとしている。
ルウブはディネの前に立った。
「お前、校則無視して取り返したそのロケットしばらく預からせろ」
「ぼくの? 嫌だよ……」
「魔女に襲われてもか?」
「親に大切にされてるお前らに命懸けても物に依存する気持ちがわかるわけない」
ルウブはその言葉を聞いて手を止めた。その手が震えている。それを見たカクランはバムと美来の後でクスクス笑っていた。
バムと美来はそれをえっ?という目で見ていた。
「見て見て、ルウブの奴葛藤してる。人のこと言えないけど魔女を捕まえないといけないので奪い取ろうか放っておこっ!」
ーーガツッ!
美来とバムは真横をいきなり飛んできた氷の塊に驚いて固まっていた。カクランは氷の塊ごと吹っ飛んでいた。
「触れ他場所から凍らせれるんだぞ、鈍器だって作れんだからな」
もう一つ投げつける気なのかバスケットボール大の氷のボールを手に遊ばせている。ルウブが投げる構えをした瞬間、バムは危険を感じ美来を押さえてしゃがみ込んだ。
その速い玉をカクランはそれを受け止めた。一発目のせいで頭から流血をしている。
「僕の能力忘れたの?」
「狐火、止めるのとは違うだろ? お前だって忘れてただろ」
「忘れてない、不意打ちだっ!」
ルウブは口だけ笑みを浮かべ、カクランを馬鹿にした目で見下ろす。
「お前、不意打ちを避けれないと駄目なんじゃねーの? ド・エ・ム」
「はぁ!? 僕は甚振られるの好きじゃねぇし! お前だってドエスだろ、小さい頃は擦り傷で泣いてたくせに」
「あ? なんっつった?」
詰め寄ってきたルウブをカクランは軽く睨みつける。
「泣き虫」
「てめぇ」
二人は睨み合いながらお互い武器を取り出して外に出て行った。
美来は微笑ましそうに見送って言った。
「カクランも喧嘩するんだね、どっちが強いかな?」
「いやいや、美来ちゃん。ドラゴンに幾ら何でも敵わないでしょう」
「ふぇっ!? カクラン半殺し!?」




