出会い
とりあえず書いてみたものです
よろしくです
ジリリリ……。
目覚まし時計がなる。
こんなものなくても起きられるのに……うるさいなぁ。
いや、こないだ卒業式に寝坊をするところだった。
目覚ましを止め、寝癖がついた頭をかく。
「あ……」
いつも付けているはずの狐耳のカチューシャが無いのに気がついた。寝相が悪くて外れたのだ。
もし、オレが人間なら絶対に着けない。だが、オレは人間じゃない。
オレの今生きているこの世界は俺らにとっては現実だ、他の世界の奴らから視れば二次元だったりするのだろう。
ここも、他の世界も、それぞれ違う何処かの世界の誰かが想像した創造世界なのだ。
掛け布団をかき分けカチューシャを見つけた。
この世界には大きく分けて数種類の種族が居る。ドラゴン、少数の人間、人の姿にもなれ話せる動物――ティーアメンシュと呼ばれる者――、これらと敵対する魔女、普通の虫や動物、植物、魔物が住んでいる。
オレは、本当は、狐だ。
ドラゴンだって人の姿になれる。でも、人の姿になってもドラゴンということを主張する物はない。
オレらティーアメンシュは、人になったとき服装などに特徴が現れるコールというものがある。迷惑な話だ。
壊れることは滅多にないものの、それがないと動物の姿に戻れない。それに、壊して戻ると……その部分から血は流れているし。戻らないと治らないから仕方ない。
この世界の奴らはこの世界が出来た時から他の世界に気が付いていて、存在が確認できる世界同士交流がある。
他の世界からはこう呼ばれている、
プハンタシアワールド1071 ころころ変わる世界
何を考えて、どういう性格でこうなった……創造者本人に聞いてみたいぐらいだ。
まぁ、多分、主人公と遇わないであろう脇役中の脇役のオレのことなんてしらないだろう。
ベットから降り、少し散らかっている部屋を見てため息をついた。洗面所の鏡の前に行き自分を見る。
寝過ぎだ……目に隈は無いが、眠そうだ。
肩まである焦げ茶色の髪が水に濡れないよう顔を洗い寝癖をくしで梳いて直す。左目を覆っている異様に長い左半分の前髪を横髪の下を通し左耳に掛ける。
寝るときから着ている黒の長袖の襟の中央が裂けるように少し開いているシャツの上にグレーの真中に星模様がついたフードのない上着をはおり、下の方だけチャックを上げる。少し緩い腰飾りの付いたズボンに履き替え、後ろに回ってしまっていた十字のペンダントを直し本来の髪を上げる役目をしない狐耳のカチューシャを着けた。
これが普段の格好、考えなくていい楽な格好だ。
時間を確認して朝食の用意をする。
焼いた食パン二枚にマーガリンを塗りたくったものに牛乳。
少ないとよく言われたが、朝はあまり食べられないから仕方ない……が食べる速度は早い。
目が覚めれば結構食べられる、どこかの女子じゃないこれでも男だから。
まあ、女装しても違和感ないだろうけど
よく見ると時間が差し迫っていた。急いで部屋を出ていく。
「ん! やべっ」
就職早々遅刻するわけにはいかない、廊下を走る。
校舎への道を歩いていると後ろから名前を呼ばれる。
「カクラ~ン」
声の主の女は横に来てまたオレの名前を呼ぶ。
「カクランてば、無視しないでよ! 殴るよ、動けなくするよ、半殺しにするよ」
空を殴ったり、けったりしている。
横は見ず名前を言い話かけた。
「アウラー……君には人にそういうことができないから、強制的に教師かただ卒業するかの選択しか与えられなかったんだろ」
アウラーは、前に出てきて膨れっ面になる。
「そんな事ないもん! だいたい、何で、カクランも教師としているの? カクランの成績なら、いろんな選択肢あったでしょ?」
カクランは、にっこりして優しく言う。
「そうだな……君と居たかったからかな?」
すると、アウラーは、膨れたまま呆れた目で見てきた。
「変態! 女好き! 見かけ倒し! 本当のこと言ってよ!」
酷い言われようだ。確かに女好きだ、でも、変態ではない。
付き合ったこともなければ襲ったこともないしそんな経験は全くない。こう言われるのは初めてではないが……。
「見かけ倒しって、初めて言われたんだけど」
見かけ倒しは、ショックだった。いくらなんでも女の子に言われるだなんて……。
立ち直れない……あ、もう、帰りたい。自分の部屋に。
「あっ急がないと! あと五分だ」
アウラーは、カクランと話ていたことを忘れ走っていった。
「牛の女が……」
ボソッと言ったが決して悪口ではない。心の中で言い直そう。
牛の女の子。
アウラーは可愛らしい牛なのだ。
異空次元警備学校二年の時に授業でペアにされてから仲良くなった、おっとりした牛の女の子。牛だけど人の姿のときは可愛らしい。
いや、アウラーの話はもういい。女性は皆可愛い。
っと、俺も急がないと。
カクランは走って職員室へ駆け込み自分の名前の書いてある席に座る。
「えー担任になる皆様には、今年初めの大切な仕事があります」
前に立って話しているのは十三歳ぐらいの男の子だ、普通なら異様な光景だろう。
この世界ではオレが産まれて数年後、世界変動というものが起きた。生きた年数齢をとることはなく齢のとりかたは人それぞれになった。それだけでなく、一定の齢になるととまったりした。それも人それぞれで規則性は無かった。
齢と言っても単純に老いなくなっただけである。アニメなどのキャラクターのように。だから死ぬ人もほとんどいない。
ただ、時間はちゃんと過ぎていくので精神的には成長している。
前に立って話しているやつも十三年以上生きている多分オレより年上だ。
「今回、入学試験を受けに来る生徒を今年の担任分に分け自分の生徒になる者の審査をしてもらいます」
この学校は、受験を受ける前から担任が決まっている。試験を受けるとき試験監としてその場にいる者が担任であり、審査をする人であり、試験を考える本人なのだ。つまり、担任でそれぞれ受験内容が違い難易度も変わる。細かい指定が無いので気分で落とされることもある。
当たり前だ、なにしろ担任はこれから最低三年間受け持つ生徒を自分で選ぶのだから問題を起こさないやつがいいに決まっている。
担任それぞれに自分が受け持つ受験生の名簿が配られる。そこには受験生の名前と会場かつ教室の場所が載っている。鍵も渡された。
もうすぐ、受験生がここに到着する。
船の上で黒髪をおろし頭の左右少し上を変わった髪留めで留めどこかの制服を着た十五歳ぐらいの女の子が遠くを眺めていた。
「ここ、どこなの……」
目に入る光景は青く広い空と海……と、なんだか異様な光景。
あそこでささを食べているのはどう見てもパンダそのものだ。しかも、私の間違いじゃなければあのパンダ、文句を言っている。
動物の鳴き声がそう聞こえるわけではなく本当に言葉を話している。
おかしい……おかしいよ……。何で? そもそも、船になんて乗ってなかった。
なのに、ここは船の上だ。
確かさっきまで家を出て何とか進学の決まった高校の入学式に向かっていたはずだ。
それが、気がつくとこんなところに。
「ハぁ…」
重たいため息をつき家を出る前の光景を思い出す。
母親が心配そうにこう言った、
「美来、大丈夫?お母さん行けないけど道に迷わないようにね?」
急いでいたので早口で答える。
「大丈夫、迷ったら人に聞くから」
そう言って家を出た。
走っている途中に視界がこの場所に移った。
これは確実に遅刻だ。
「お母さん。迷ったけど、取り返しのつかない妄想に迷い込んだよぅ……」
心配してるだろうなぁ……。
自分がここまで方向音痴だなんて。
美来がいろいろと後悔をしていると一人のイルカのような被り物をした船員がでてきた。
「受験生の皆様、もう間もなくリスター島に到着いたします。お忘れ物の無いよう降りる用意をしておいてください」
美来の頭に浮かんだ言葉は
「リスタート? うぅ…出来るものならしたい」
きっと悪い夢を見ているのだ……まだ、夜中で、朝ではないのだ。
美来はそう思うことにした。
船は島に着きぞろぞろと人が降りていく。
よく見れば皆独特な服装をしていて美来だけ浮いているような感じがする。
「こ、これは夢だから大丈夫」
そう、夢……誰も私のことは見てないから夢だ。それに制服だって変わった服だよ。
自分に言い聞かせる。
船から降りるとき紙を渡された。どうやら受験の会場の場所が書かれているようだ。
すぐ目の前に校内の見取り図があったので認して自分の会場に向かった……はずが、迷いまくった。
「夢なら、方向音痴ぐらいなくしてよね……」
そもそも地図など歩いている間に忘れていってしまった、紙に書き記すべきだと思う。
文句を言いながらも何とかたどり着いた。
さすがに遅れただろうな、悪夢になりそう……。
美来がそんなことを思いながら入ると中は静かなもののまだ始まっていないようだった。本を読んでいたり、机に伏せていたり、物騒な武器の手入れをしている人、完全に眠っている人までいた。
ここは、どれだけ自由なのだろうか?
髪の毛の色は皆違いすぎるだが、染めたわけでもなさそうだ。
席に着くとドアが勢いよく開いてカクランが駆け込んできた。
「はぁ……はぁ……」
息切れをしている、迷いに迷ってたどり着いた結果のようだ。
前に立ち説明を始める。
「えーと、遅れたけど、誰も気にしてないよな?」
美来は周りを見る。
あの人、先生なのかな? なんか耳着けてる。
「てか、遅れるなよ……」
ぼそりと美来が言うとカクランと目が合った。
「じゃあ、試験を始める。まず、このアンケートに答えてもらう」
紙が配られる。
「適当に答えないようにな、あと、私語はするなよどんだけ小声でも聞こえるから」
私に言っているんだ。
紙に目を通した。
1.貰って嬉しいものは?
2.僕のことどうおもう?
3.最終学歴
4.アウトドアでは、何が経験ある?
5.運動神経に自信は?
6.好きなことは?
これは半分以上個人的なことではないのかと何人かが疑問を持つ。
美来や他の数名はとりあえず答えた。
二十分して、アンケート用紙が回収される。
「次に、封筒の中の紙に触れてもらう。五分ぐらいで終わるから気楽にな。あと、封筒に自分の名前も書いとけよ」
封筒が配られる。
美来は覚めることのない夢がいつ覚めるのかと思いながら言われた通りにする。
封筒も集められこれで試験は終わりらしい、一日で結果が出るので教室で待たされる。
何時間まっただろうか? やっと、あの狐耳の教師が戻ってきた。
遅かったなぁ。
つかれた、これで終わりか……。
カクランは早くこんな一日を終わらせようと何とか結果を出してきた。
全く、最悪だ。三年間住んでいたも同然の場所で迷うなんて、一日に二回も。そういえば、こっちの校舎にはあまり来たことがなかったな。
これだけ広い学校だ、行ったことがない場所があっても仕方ない。
受かった人の名前を順に読んでいき最後の一人まで読み終わり顔を上げる。
呼ばれなかった奴らは出ていった。
運悪く残ってしまったというように俯いている美来に視線を向ける。
あの子は、一体どうしたんだ?まるで、ここに居ること自体に困惑しているようだ。
受験生として正式に名簿に名前が書いてあった。だから、受けに来たことは間違いないだろう。
カクランは、今は気にしないことにして異空次元警備学校の説明をする。