そしてこんにちは(2)
結局毒キノコは焼いて食べることにした。本来ならあっという間に手がかぶれてしまう毒キノコだが、やはり何も起こらない。火である程度あぶると変な色の煙が出たが四の五の言ってはいられない。
正直なところ怖いので、ヴォーから譲り受けたサバイバルナイフを取りだし、あぶったキノコをほんの小さく切り落として口に入れる。量に関係なく危険なので気休め程度ではあるが。
毒キノコが体内に侵入した場合、常人なら数分で命を落とすと言われている。緊張感の漂う時間。焚き火がパチパチと音をたてる。心なしか暗くなったか。
しばらくの時間が経過した。結論から言うと全部食べてしまった。体に変化は無い。とりあえずこの毒キノコは見つけ次第回収することにしよう。食料にも、多分武器にもなる。周一は焚き火に当たりながら上れそうな木を探していた。何だか体がむず痒い。
むず痒い。なんだこれは。その原因はジーンズのポケットにあった。初日に朦朧とした意識のなかで拾った綺麗な石ころがブルブルと震えている。
「何だこれ、着信か?」
青くぼんやりと光る石はしばらく震えきった後、パキリとヒビが入った。中からずんぐりとしたイモムシが現れる。それは周一の手のひらの上で体を振って石ころの破片をふるい落とした。
「卵だったのか…」
今の周一は卵というだけで食べればよかったという後悔が生まれてしまう程度には、この生活に順応しつつあった。彼自身も自分の適応力に驚いていた。
それにしても奇妙な幼虫だ。足は6本で頭はのっぺりとしている。頭のすぐ後ろには水晶のような球体が1対あり、一見これが目のように見える。実際の目は頭の下の方に付いており、これもまた小さな水晶のようだ。
水晶のような球体はぼんやりと青く光っている。全体的な見た目はカブトムシやクワガタの幼虫に近い。しかし、多くの人が知る白くぶよぶよとした見た目ではなく、灰褐色のゴツゴツとした表面をしている。岩や金属でできているかのようである。
「よしよし、森へお帰り。」
周一はしばし戸惑った後、森へ放してやることにした。意外と重い幼虫を落ち葉の上にそっと乗せてやる。すると幼虫の水晶の色が青から緑に変わり、いくらか点滅した。どういうことだろうか。
「おわぁ!」
彼が驚くのも無理ない。ボフッという効果音とともに幼虫は落ち葉を巻き上げ飛び上がり、見事周一の頭の上に着地したのだ。そのままぺたりと頭の上を陣取り、動かなくなった。頭に乗った幼虫は何故だかさっきより軽く感じられる。
「お前…今の魔法か?魔法が使えるのか?」
幼虫は前の足を動かしペシペシと周一の頭を叩いた。返事の代わりなのだろうか。いまいち分からない。かくして、周一は後の相棒となる者との出会いを果たしたのであった。
相棒登場です。虫が苦手な人にも可愛く見えるぐらいに書けたらいいなあ。




