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鎖の勇者は旅をする  作者: ふらいD
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そしてこんにちは(1)

ここは森である。追加された情報を付け足すと、ここは『迷いの森』である。森には木々の根に引っ掛からないよう、のそのそと歩く青年の影あり。彼の首にはマフラータオルのような軽い具合で鎖がかかっており、静かな森に似つかわしくないチャリチャリとした音を響かせている。


この青年が、その名を叢場周一が、狼頭族の村を出て2日目の昼下がりであった。昨夜は木に登って神経を尖らせつつ過ごした。一睡もできなかった彼はかなり眠そうだ。それもそのはず、彼が初めてこの世界に来た夜とほとんど何も変わっていない。変化と言えば首にかかった鎖くらいのものである。


彼は鎖についてふんわりとした内容の伝承しか聞かされていない。用途も効果も一切不明なのだ。ずっと首にかかっているが不思議と重くない。これは気にしないことにした。つまるところ物理的条件は実質、死にかけた初日と同じなのだった。


しかし彼の頭には前と違って情報がある。夜行性のトカゲモンスターの存在と、昼行性のハチモンスターの存在である。この森で目立って危険なモンスターはこの2種であり、夜は木の上を、昼は木の下を行くことである程度の安全が確保できる。例外は多くあるが。


聞かされた伝承をなんとなく反芻しながら木々の間を抜けていく。はやめに食料を見つけないと旅立つときに貰った保存食が底を尽きてしまう。


「お!キノコ!!」


思わず声が出てしまった。食料発見である。このキノコについては村で良く聞かされた。これは毒キノコだ。狼頭族は矢じりに毒キノコを煮詰めた汁を塗り、毒矢とする。その毒矢を食らって平気だった周一は、恐らくこのキノコが食べられるとふんでいるのだ。


「日が沈む前に食わなきゃな。」


背負っていた布鞄から薪を取り出し、譲って貰った特殊な油を塗る。この油はトカゲモンスターの体液から得られ、発火温度がそれなりに低い。このため油を塗った薪にもう一本の薪を擦り付けて火を起こすことができる。うまくいったようだ。


さて、毒キノコはどうやって食べようか。

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