王都へと(3)
「おかしいな……この辺だったはずなんだけど…。あ、カーリスさん!」
冒険者ギルドは草原のなかにポツンと建っているはずであったが見当たらない。かわりにカーリスという吟遊詩人の老人が立っていた。
「おお…!おお……!生きておったか!」
「いやあー、そう簡単にくたばりませんよ。」
「よくぞ戻ってきた…。よくぞ…!」
「…………何かあったんですか?」
カーリスが答えるより先に、ものすごい勢いで何かが飛んできた。それは盛大に土埃を撒き散らしながら地面を滑走し、ちょうど2人の手前で止まった。髭面の韋駄天、マルクだ。
「おうおう!生きてたかボウズ!正直ダメかと思ってたぞ!」
マルクは笑い飛ばした。カーリスがマルクを制して口を開く。
「焼き討ちじゃ。邪悪な気配を感じてギルドを少しだけ離れておったときにやられた。
邪悪な気配は奴ら…北の魔王の手先じゃったから成敗しておいたんじゃが…。」
「戦ってる最中にヤバいとは思ったんだが……奴らをとっちめて戻ってからじゃ遅かったって訳だ!」
目を凝らして見ると、なるほど少し行ったところの地面が黒く焼け焦げている。地面から炭になった柱が生えているのも確認できる。
「なるほど…。僕もその焼き討ちの残党どもに襲われて死んだ、もしくは拐われたと思っていたわけっすね。」
「そうじゃ。すまんのう……それに建物が燃えてしまった。恐らく従業員は拐われたじゃろうに。」
「まあ……仕方ないですよ。カーリスさん達が守れないなら誰も守れないですって。
あ、これって僕の依頼はどうすればいいんですか?」
周一は冒険者として依頼を受けていた。南の森の調査だ。森の中でひと悶着あったが、そこは上手く誤魔化して報告するつもりであった。
「うむ。この焼き討ちの件も含めて、1度王都の冒険者ギルド本部に報告に行くつもりじゃ。シューイチもついてきて、そこで依頼の話をつけるのはどうじゃ?」
「なるほど……。そうっすね。そうしましょう。しばらく同行をお願いします。」
「ガハハ!話は纏まったな!もう日が沈むから出発は明日だ!交代で見張り番をして寝るぞ!」
そう言ってマルクは周一の背をバシンと叩いた。沈む夕日が焼け焦げた冒険者ギルドを照らし、柱の焼け残りの影を長く伸ばした。明日、彼らは王都へ向けて旅立つだろう。




