序章:別の朝(6)
「シューイチくん、昨日の夜、狩りに出かけたヴォーや精鋭達と遭遇したとき、モンスターに襲われそうになっていたというのは本当かい?」
「あ、あれはヴォーさんだったんですか。確かにでかいやつに見つかって大変でしたよ。」
「本当なのか…だとすると小隊のうち数人が、君の存在を知らずに誤って矢を射ったというのは…?」
「あー、確かに矢がいっぱい降ってきて……でもまあ1発肩口にカスったくらいですよ。平気っす。」
ミチトは顔をしかめた。何だか嫌な予感がする。背中にじわりと冷や汗が浮かんだ。
「実はその…言いにくいんだが…矢じりには毒が塗り込んであったんだ。大きなモンスターを倒すための毒だから、君はもうとっくに死んでいてもおかしくないんだよ。」
「あ……。お前はもう死んでいる……的な?」
周一渾身のボケは全く通用しない。いつしか宴の席は静寂に包まれ、中心の炎がチリチリと燃える音しか聞こえない。
周一は我にかえって意外にも冷静に考えていた。
((これは多分…転生のボーナス的なやつだろう……。おかしいと思ったんだ…転生したのに酷い目にあってばかりだった。まあギリギリ助かってたけど…。こういうやつはやたらフランクな神様とかに会ったりしてちょっとくらい特典があるものじゃないか。))
静寂の中で長老がすくっと立ち上がり、村の奥へ消えた。狼頭達がにわかにざわめきたつ。ミチトは状況をあまり把握していない。
直後、村の奥が青白く光る。村の奥に鎮座する大きな骨に巻き付いた鎖が、青く鈍い輝きを放っている!その下で長老は祈りを捧げる。いったい何が起こるのか!
周一はこの世が改めてファンタジーであることを痛感した。鈍い輝きを放つ鎖は、錆びた部分が剥がれ落ち本来の姿を表す!そして骨からフワリと浮き上がり、こちらに向かってくる!そのまま周一の首にかかったではないか!
ああ、また唐突に来るやつか。今度は絞め殺されるのか。と彼は思ったが、そうではない!首に巻き付いた鎖はそのまま輝きを失い、あたかも首にかけたタオルのように緊張感無く、その場におさまった。
混乱しているミチトを除き、皆が何かを確信したように周一を見つめる。
そう。この夜、古の勇者の神器「戒めの鎖」に選ばれし新たな勇者が誕生したのである。




