王都へと(1)
――この河が広大な大陸を2つに分けたとき、その東半分の中心には大きな街ができるだろう――(神話:旅人のトラゴーディより)
この世界に伝わる旅人神話、その一節が誕生の由緒とされる数千年の歴史ある都。それがこの王都オースガードである。城壁が円を描くように街を取り囲んでおり、円の中心には長々と歴史を紡ぐ王城が存在する。
さて、その王都から西に行った先、城壁からずっと西まで小さな村が点在する地域が広がっている。その中の村の1つに、ある異変が起きた。
その村では、嘗て存在したドラゴンの骨だとか、神の腰かけた石だとか、なんとも曖昧な伝承を持つ岩が祀られていた。
ある恐ろしい嵐の夜、閃光と共に一筋の稲妻が村を襲った。正確には村人に信仰される岩に雷が落ちたのだ。
夜が明けるとその岩には、何ともまばゆいほどの美しさを放つ細身の剣が突き刺さっていたのだ。村の人々はこの不思議な出来事により一層の信仰を深めた。が、自体はそれに留まらなかった。
2年前に両親を失い、天涯孤独の身となっていた村の少年がこれを引き抜いたのだ。硬い岩からするりと抜けた刀身は、彼の腰にいつの間にか現れた鞘に丁度おさまった。これの意味することは1つ、新たな勇者の誕生である。
村は大騒ぎになり、あれよあれよと言ううちに話が進んだ。少年はこの地域を統一する王都オースガードに向かうことになったのだ。新たな勇者として王に謁見し、使命を受けることを目的として。
かくして少年は亡き父の友と幼馴染みの少女を連れ、王都へと向かうことになったのである。




