コントロールシステム(10)
周一が目を覚ますと、視界には夕焼けに染まる谷が広がった。一面橙色の谷が。
「なんだヘリアか。」
へリアは覗き込んでいた体を起こす。橙の谷はたおやかに揺れて遠ざかった。彼女は右腕につけた腕輪を弄りながら話す。
「うぇへへぇ。起きたね~。」
「あれからどうなった?」
周一は体を起こしながら聞いた。へリアは相変わらず腕輪を弄りながら答える。
「何にもないよお?家は結構な数がメチャクチャになったけど、避難した人は助かったし~生きてる人はだいたい寝ちゃったかな?
私からはそれだけ~。」
へリアは甘ったるい声で言うと目配せをした。すぐさま男が入ってきて、ダンッ!と床に頭を打ち付けた。そのまま男は続ける。
「すみませんでした!!!大変なことをしたと聞きます!命で償わせていた……」
「え?え?…ちょっと待って誰ですか?」
周一は慌てて聞き返す。泣きながら顔をあげた男は目の下にクマがあり、周一以上に細長い体型をしている。彼には確かに見覚えがあった。周一は怪訝な顔をして聞き直す。
「あんたディーズか?」
「そうです……。起きてから何が起きたかおばば様に全て聞きました。僕らは…僕らはなんてことを……」
「僕……ら?」
ディーズは視線を横にずらす。何故今まで気づかなかったのであろうか。そこには大型犬並の大きさをした焦げ茶のハムスターがディーズにならって土下座している。
「嘘だろオイ………いや、冷静に考えて嘘だろ。」
「信じられないでしょうが、コイツがウォルです。こんな獣と言えどとても理知的で賢いやつだったんですが…。」
((なるほど、ウォルが魔水晶で理性と引き換えに力を手にいれたってのはそういうことか。
そしてディーズは人相の良さと引き換えに……。いや、今もクマができてるし別の方向で目付き悪いな。))
「僕らを魔水晶の呪縛から解いてくださったのがシューイチさん、あなたと聞いて……僕らは…どうすればよいのでしょうか?おばば様はシューイチさんに聞けと…。」
一番の被害者であるのは集落の人だろうに、なぜ周一に罰を決めさせるのか。一瞬疑問に思ったが彼はすぐに答えを出した。
「ふむ。こちら側としては仇を恩で返したわけだからな。然るべき処罰と対応が必要だろう。今2秒で解決策を思い付いた。」
周一は悪い笑顔を浮かべた。




