コントロールシステム(7)
「おい青いの、俺はディーズ!獣使いだ!獣使いと言えばムチだが…俺のムチは何だろうなぁ!?」
ディーズは叫ぶと同時に腕を伸ばした!それはまさしくムチのようにしなり、敵の喉を一撃で仕留めるであろう。だがそうはならない!
ディーズの爪はおよそ人間の物とは思えぬ鋭さと硬さを兼ね備えており、腕を伸ばして振り回すことで伸縮自在の刃物と化す。だが、青いローブの首筋を確実に捉えたはずの一撃は、ローブを引き裂いて止まった。首に鎖が巻かれているのだ!
((自分の能力を簡単に教えてくれるとは助かった。バカだこいつ。漫画やアニメによく出る戦闘狂タイプのバカだ。ありがてえけど油断はできないな……多分こういうバカは強いはずだ…!))
「オイなんだその鎖はよお!?硬えじゃねえかあ!」
ディーズはなおも腕を振り回す。青フードのなかで周一は苦笑いを浮かべる。
((鎖は上半身に巻き付けて腕に持ってきてるから足のガードが無い……足をやられるとまずいな…一瞬で負けかねない。けどリーチならこっちも負けてねえんだよ!))
ディーズに鎖が襲いかかる!両者の距離はお互いに3歩ほど離れており、その間を長くしなる2種の武器が火花を散らしてかち合い跳ね回る!
((オリオンには姿を出さないように言ってあるからな…アイツが出てきたら俺の招待がバレるようなもんだ。つまりマジの1対1なんだよな…。))
鎖には明確な殺傷力が無い。その分、周一はローブを切り裂き続ける恐ろしい爪に押されつつあった。周一はムチの腕をさばきながらじっと勝機を待つ。そしてそれは訪れた。
突如、地響きがその場を襲う!ウィルがその巨体を地に打ち付けたのだ!さしもの獣人も、魔人と呼ばれる者達の恐るべき猛攻に耐え続けることはできぬ!ディーズの集中が乱れる!そしてその隙を見逃す周一ではない。
周一は無詠唱でアクアショットを放つ。ディーズが意識を引き戻し、激しくしなる腕で魔法を叩き落とそうとする。それは1本の腕の自由を失うことを意味した。
周一の鎖は両端を左右の腕に持ってきてあり、伸ばせる場所はその2ヶ所だ。対して今ディーズが使える腕は1本、この一瞬でどちらに勝敗が傾くかは明白であった。
「クソがああ!」
1本のフリーな鎖がおぞましい勢いでディーズに絡み付く!四肢を拘束し、気を付けの姿勢を強制し、最後に首を絞めにかかる!
「昨日はへリアの相手で、今日はコイツの相手だ。参ったなこりゃ。」
周一のぼそりとした呟きを聞き、隠れた場所でオリオンが両前足を上げたのだった。




