コントロールシステム(5)
「ほう…じゃがそうおいそれとワシらのことを話すわけにもいかん。ワシらにも色々と問題があるのじゃ。」
「なるほど。どのような問題かも秘密ですか?」
周一は現在、面会中だ。村一番の長生きであるおばば様は、どう見ても30代後半程度の女性であり、大人の色気を振りまいている。このなりで何百年と生きているらしい。このおばば様も相変わらず橙色の、つるつると照った肌をしていて肉付きが良い。周一はこの集落に来てからグラマラスな女性しか見ていない。
「うむ…無関係を選ぶならば巻き込むわけにはいかんからのう。」
「そうですか……。」
「うむ………。」
気まずい沈黙が流れる。周一はここに住む人々の暮らしぶりについて詳しい話を聞いたのだが、このようにして断られた。因みにその前に彼は、この集落にしばらくとどまり、何人か子どもを作って欲しいという頼みを断っている。
彼は沈黙に耐えられず切り出す。
「あっ、そうだ。俺も吟遊詩人の端くれなんで、まあ駆け出しなんですけど……それでも良かったら1曲やりますよ?」
「ほ、ほう。よいの。では観客は2人じゃが是非聞かせておくれ。」
この部屋にはおばばとへリア、周一の3人しか居ない。
「何の曲にしようか……。」
周一が呟きながら楽器を準備し、まさに今、演奏を始めようとした瞬間、轟音が響き地面が揺れる!
「ずいぶん大きな音の鳴る楽器じゃな。」
「いやそこでお婆ちゃんらしさ出さなくて良いっすから!」
「これ敵襲よね~?奴らが来たのよね~?」
周一はツッコミを入れつつ、へリアの一言でこの人々の"事情"を軽く察した。すぐさま楽器を壁に立て掛ける!
「加勢しますよ。」
「巻き込んじゃダメっておばば様が言ってるでしょ?」
「そうじゃ。ここで待っててくだされ。」
言う通りに待つべきだと彼の理性が告げた。だが、彼のもっと奥底に眠る何かが、戦いの場に出ることを強く主張していた。
「要は俺の素性がばれなきゃ良いんすよね?それなら俺は巻き込まれてないと言える。だったら…」
周一は着ていたローブを裏返して着なおした。そして深々と大きなフードを被る。ローブはリバーシブルであり、今の彼は深々とたゆたう大海のごとき藍色に染まった。
今後、都市伝説として語られる青色の化け物、勇者としての彼の初舞台である。




