コントロールシステム(2)
「シッ!」
周一は振り向きざまに右掌底を繰り出す!獰猛な目をもつそれは、顔を上げて掌底をかわした。しかし右手は囮だ!
『万物を清めし流れよ ここに形を為さん』
「アクアショット!」
左手から水の球体が勢いよく発射され、見事敵の頭に命中した!魔法の発する光で一瞬だけ相手の姿が明らかになる。巨大な2足歩行のトカゲモンスターだ。 周一は依然このモンスターに苦しめられた。
「悪く思わないでくれよクソトカゲ!」
トカゲは真正面から水塊を被り、数瞬のヒットストップとともに視界を失った。周一は左足を前に半身の構えをとり、中腰姿勢で弓を引き絞るようにして右拳を体の後ろへ持っていく。何かが割れるような音と共に薬指の指環が砕け、周一の右腕におぞましい勢いで鎖が巻き付いた!
「おらよ!」
右ストレートがトカゲの首に炸裂!敵は短く悲鳴を上げ、息絶えた。
「あ、オリオン起きてたか?今回は出番無かったな!いやー残念残念。」
オリオンはフードの中から嬉しそうにニヤニヤとする周一を一瞥し、付き合ってられないとばかりに二度寝した。
「へへへ、旦那。このトカゲの油が金になるんですぜ…。」
周一は一人でモンスターに勝てたことに気を良くし、舞い上がっていた。焚き火が景気良くパチパチと音をたてる。彼は今トカゲモンスターを解体中だ。トカゲの油は火起こしになるため、ひとまず木の枝に吊るして血抜きをするのだ。
「ん?」
ふと何かに気づいて顔をあげると、木々の向こうに仄かな明かりが見えた。人がいるかもしれない!周一は焚き火を踏み消し、十分に警戒しながら明かりに近づくことにした。
足音を殺して歩くこと数分、明かりの正体が判明する。松明だ。木々の開けたこの辺りには小さな集落が存在し、人が住んでいると見える。だがまだ油断はできない。よそ者と見るや襲いかかってくるかもしれぬ。
こういった判断について、周一は依然よりずっと慎重になっていた。この世界に来てからの危険な旅で、隙が無くなっているのだ。だが、そんな彼の意識をするりと抜けて背後から声がかかる。
「あれ?おにーさん、旅の人?うぇへへぇ…いらっしゃ~い。」
((おいマジかよ……。今の俺達の背後をとるなんて相当な手練れだな……うーん、勝てないだろうし従おう。))
「どうも。」
周一は流されるようにして、背後をとられた女性に集落へと案内されるのだった。




