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鎖の勇者は旅をする  作者: ふらいD
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空の下(2)

冒険者ギルドから南の先、そこには周一とオリオンの良く知る場所がある。何を隠そう、彼らの受けた依頼は『迷いの森』の近辺調査なのだ。


1人と1匹は迷いの森へ向かって晴れた空の下、草原を歩いている最中であった。しかし行く手を阻むものあり。



「でっか……!」


彼らの前に現れたのは、常識を逸した大きさのワニのようなモンスターだ。大きすぎて目の位置が周一の頭より上にある。全長は数メートルに及ぶだろう。それは偶然通りかかって、ちょっと横を見たという具合に体の半分を曲げて、こちらを凝視している。


巨大ワニは木の棍棒を転がすような音で喉を鳴らしながら周一へ向き直した。よく分からぬまま敵と見なされたのだ。瞬間、周一とオリオンは臨戦態勢に入る!


「行くぞオリオン!」


ワニは巨体に似合わぬ恐ろしいスピードで突っ込んで…来はしなかった。巨体に似合う速度で、存外避けるに容易い。周一はマルクに習った足運びで軽やかに避ける。


「カメみたいな遅さだな。どうやって生きてんだ?こいつ。」


効くかは分からないが、周一はひとまず擦れ違いざまにアクアボールをぶつけた。それは砂漠のひび割れた地面のような巨大ワニの表皮をしっかりと潤したが、それだけだった。続けて、周りの地面を巻き込みながらゆっくりとワニの尾が迫る!


「おっと!」


大した速度ではない。そういった油断からか、ワニの尾が周一の左ももをかすった。


「えっ!ちょっ…!」


たちまち周一は吹き飛び、地面を何度も激しく後転する!かすっただけの一撃が重すぎたのだ。


「吐きそう…。」


水魔力による主な身体強化はスタミナ強化だが、次いで柔軟性、筋力の強化もある。このお陰で派手に吹き飛んだ割に無事であったが、まともに食らえば身体中の骨が砕けるであろうことは理解した。


「あー!また抜け駆けしてる!ちょっと待てよ!」


叫ぶ周一の目線の先には、巨大ワニの背に乗るオリオン!そして大きくのけ反るオリオンの鼻先にはこれまでにないほど巨大な氷塊が!


オリオンがワニの延髄に思いきり頭突きをかます動きと連動して、巨大なハンマーのように氷塊が突き刺さる!一瞬の沈黙を経て氷解が砕けた後に、山が崩れるようにしてワニは地に伏した。


「うーん、やっぱオリオンって強いわ……お前ほんとに幼虫かよ…。」


周一は多少悔しがって独りごちた。森はもうすぐだ。彼らは依然さ迷って何とか生き抜いた、因縁深き『迷いの森』へと足を進めるのであった。

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