ファンタジー(2)
その夜は新月であった。
彼らは暗くなる前に帰れと言われたが、しっかりと言いつけを破ってしまった。2人は森の近くの何もない原で、魔法の練習をしたり、追いかけあったりして、ひとしきり遊び終えた後であった。
2人は木々を掻き分け町に戻る途中だ。『森に生えているキノコは毒キノコだから、触ったり食べたりしては駄目』としつけられており、うっかり触らぬよう前を確認してから進むので、進む速度はそれほど速くない。歩きながら不安そうにナナが口を開く。
「怒られちゃうかな?」
「その時は俺が守ってあげるよ!」
調子のいい具合でリーフは返した。
((モテなかった俺に可愛くて将来有望な女の子の幼馴染みができるなんてな…!
小中高と目立たなくて地味だった俺がこんなにリア充イベントを堪能できるなんて…。全く異世界は最高だぜ!))
「うっ…!」
後ろを歩くナナが少しフラつき、頭を押さえてしゃがんだ。
「どうした?足をくじいたのかい?」
「ううん…なんだかフラッと来たの。もう平気だよ?」
「どこか悪いのかもしれないからな。帰ったら医者に見てもらって、聖魔法で治療してもらう方がいいかもしれない。」
「……なんかリーフ君、お母さんみたいだね。」
「心配してんだぞ。」
小さく笑うナナをリーフは小突いた。町はもうすぐだ。
「あれ、聖魔法ってなんだっけ?」
「知らないのかよ!えーっとな…
古来より伝わる唯一の古代魔法で、聖なる光によって人体に癒しを与えることができる魔法。って本に書いてあったよ。」
「…こんどはお父さんみたい。何言ってるか分かんないんだもん。」
「まあ僕も本で読んだだけで良く分かってないんだけどね。」
2人は同時に笑った。後ろを歩くナナを見ていたリーフは前を振り返る、そしてたどり着いた町の光景を見て絶句した。
町が燃えている。




