ファンタジー(1)
ビットタウンという小さな町の南には、東西に延々と続く森がある。その森をずっと西に行った先、そこには空を覆わんばかりの圧倒的な巨大さを誇る大樹が生えていた。
ここは、神聖なる大樹の元に集う人々が作った由緒正しい町である。大樹を囲むようにして発展した町は、その巨大すぎる目印と相まって古く歴史のある観望を保っている。
大樹の根本に最も近い巨大建造物の1つ、その横に小さくある家の書庫では、一人の少年が本を読んでいた。
((やあやあ、俺は今本を読んでいるところだ。こっちの生活にも随分慣れた。文字だって読めるぜ。なんたってもう9歳だもんな。
名前は…こっちではリーフという。実に主人公らしい名前だ。多分、職業はロードだろうな。
……誰に自己紹介してるんだろ。))
彼はリーフ・リーブライア。何らかの事情により、この世界に転生した男だ。
((転生してもう9年も経つのか。最初は戸惑ったな…。見知らぬ親に抱かれて、見知らぬ家で過ごすのは多少苦痛だったし。
でももう慣れた。元の世界にも多少の未練はあるけど、どうせクソみたいな人生送ってただけだし、この世界で心を入れ換えるって決めたんだ。
転生と言ったらチート主人公ハーレム展開がお約束だもんな!という訳で読んでる本はもちろん、魔法に関する本だ!こういう地道な努力が後になって実を結ぶはずだ!))
「リーフくん、またお本よんでるの?」
色の白い少女が、書庫の床に座り込んで本を読むリーフに話しかける。
「なんだ、ナナか。そうだね…ちょっと外で遊ぼうか。」
((この子は幼馴染みのナナ。隣の家に住んでる良家のお嬢さんらしい。
何故俺がお嬢さんと仲良くできるか、それは俺の家も格式高い家だからだ。))
「ウルムくんも呼ぼうよ。」
「あいつは一家総出でどこか行ってるんだって。今日は僕と2人だ。」
「そっかぁ…。ちょっと寂しいね。」
「しょーがないよ。」
二人の少年少女は広い家の廊下を小走りで渡り、玄関から勢いよく外へ飛び出す。彼らの親は仕事中だ。
「ヴァンさん!ナナと外で遊んできます!」
リーフは精一杯元気よく、家の門番に告げる。
「今夜は月明かりが期待できないから、暗くなるまでには帰るんだぞ。俺の仕事が増えるし…ご両親も心配なさるだろう。」
「はい!」
2人は返事をするなりどこかへ走り去っていった。
門番は何かを感じとり、大樹を見上げた。が、何もなかったのだろうか、今一度前を見据えて仕事に戻った。
メインの主人公格に応じて地の文の雰囲気を変えていきたいですね(願望)




