町へと(4)
魔法使い用品店は、まさに想像通りの魔法使い用品店であった。何らかの魔導書や指南書、魔方陣の書かれた布、魔法使い用のローブ、何に使うのか全く分からない動物の手足や木の実。この雑多な店を魔法使い用品店と呼ばずして何と呼べるだろうか。
((物が多すぎるし規則性も無さすぎる…ヴィレ◯ンかよ…。))
周一はこの店に用があった。それは何か。彼は壁にいくつかかかっている魔法使い用のローブを見る。
((ふーむ、これだな…。さーて、異世界でまともに買い物できるだろうか。))
「すみません、このローブは手持ちのこれだけで買えますか?」
周一はニックを捕まえた報酬金の半分を出した。
「ほう…。買えるね…でもあんた……階級は?」
カウンターに座ったとんがり帽子の老女が答える。
((階級……この場合の階級は"身分"か…?))
「はは…なにぶん田舎者でして、ここにも魔法の修業をしながらようやくたどり着いたところなんですよ。
でもやる気はあるんですよ!毎日練習してますし!」
周一は精一杯の爽やかさでお茶を濁す。まずは何の階級かを知らねばならぬ。
「なんだ。アンタ見習いかい……。こいつぁアンタには勿体ないような品だよ…。まあ金を出すってんなら止めやしないけどね……。」
老女はばつが悪そうに答えた。
((なるほど……魔法使いには階級があるのか…恐らくそういうことだろう。
見習いは一番下の位なんだろうな…。))
「では買わせていただきます。すぐにこいつに見会うような魔法使いになってみせますよ!」
老女は低い声で三度笑った。ローブに付いたタグを切ると周一の出した金を全部受け取り、ローブを差し出した。
「ありがとうございます。」
周一はそのままローブを羽織る。ここで装備していくのだ。
周一の購入したローブはリバーシブルで、大きなフードがついている。表は落ち着いた深緑色であり、これは周一の趣味だ。彼は緑色が好きであった。もしくは森の中で長らく過ごしていたため、本能的に保護色を選んだのかも知れない。
裏面は藍色で、ひんやりとしている。周一は基本的に表の面しか着ないつもりであった。全身をゆったりと覆うローブを着たことによって、目立つ鎖を隠すことができる。周一は大きなフードにオリオンを放り込んだ。
次、向かうべきは目の前の冒険者ギルドである。




