町へと(3)
「ここはビットタウンだ。」
門番が答えた。いかにも急ごしらえといった感じの門の前に門番が一人。とてもやる気がなさそうだ。
「えーと、ここに入るための条件か何かはありますか?」
周一が問う。ちなみに今は体に鎖を巻いていない。怪しまれてはいけないからだ。
「構わん。ただし危険人物でないかどうかチェックする。こんなご時世なんでな。」
「はは。そうですよね。ところで、」
どんなご時世なんだと心の中で呟きつつも、周一はこの町に来るまでに一番荷物になったものを差し出す。
「こいつ、俺の命を狙ってきたんですけど、手配中だったりしませんか?」
ニックだ。鎖で後ろ手に手首を縛ってある。最初のうちこそやかましかったが、無視し続けたら今のように静かになった。
「おお!そいつは爆弾魔のニック!
賞金稼ぎとして活動するものの、すぐに盗賊に身をやつしたアホだ!近ごろ被害が相次いで居たのだ!協力感謝する!
身柄はこちらで拘束させてもらうので詰め所に放り込んでおいてくれ。」
門番は少しやる気を出して答えた。多分かなり厄介だったのだろう。
((薄汚れた身なりで再登場した時点で怪しいと思ってた…。連れてきて正解だったな。))
「逃げ足が早いので注意してくださいね。」
「ああ、とても手を焼いたよ…。」
門番はうんざりといった感じで答えた。
ほどなくして身辺チェックも終わった。毒キノコや毒リンゴは外敵から身を守るために使っていたと言えば認めてもらえた。これらがどこに生えているかまでは知らないらしい。ニックを詰め所の簡易懲罰房に連れ込むのを確認し、こっそり鎖を回収する。新技・遠隔操作である。
こうして周一は晴れてビットタウンに到着した。ニックを捕まえた報酬金としてそれなりの金も貰えた。まずはどうするか。
((それにしても、賞金稼ぎが賞金首になるとは…。やっぱあいつ凄い馬鹿なんだな…。))
周一は町を見渡す。あまり発展していない。掘っ立て小屋のような家が立ち並んでいる。オリオンは怪しまれないよう、食料をいれるポーチの中に居るが、とても息苦しそうだ。まずは宿だろうか。
そう思っていたとき、1件の店が周一の目に止まった。魔法使い用品店だ。




