町へと(2)
「鎖メガネぇぇぇぇ!!!」
ニックは恨みのこもった目を周一に向ける。ニックは前に周一の命を狙い、返り討ちにされた魔法使いだ。爆発する魔法を使うボンバーヘッドの男である。
「鎖メガネって何だその特徴を完璧に言い当てた呼び方は。」
((確かにこっちからは名乗って無かったな。まあいいか。))
前回、周一を襲撃したときに比べ、ニックの見てくれはかなり薄汚れていた。
((半日もあれば目的地に着いたのにな。鬱陶しい奴だ。))
胸中で呟きながらも、鎖を構え、警戒は緩めない。ニックは馬鹿だが強い。
だが、現在の周一は魔力による身体強化を修得しており、さらにニックが恐ろしいスピードで動くことも分かっている。風、もしくは火の身体強化であろう。鎖の操作も前戦ったときより洗練されている。前回より好条件だ。
「おらぁあああ!食らえや!!」
ニックはお得意の赤弾を発射した。この魔法に少しでも触れると爆発する。速度は比較的遅く、全速力で走る人間と同じ程度だろうか。
地面に着弾した赤弾が土を巻き上げ爆風を撒き散らす。新たな赤弾もすでに発射済みであり、加えてニックは自分の発射した魔法の倍近くの速度で殴りかかってきた。
((なるほど…。高速戦闘においてその赤弾は設置技に近い役割なのか。))
周一はニックの拳を綺麗にかわす!触れられると爆発する魔法を発動されてしまう。
ところで、オリオンは最近、ある変化が起きた。ヨルンと闘った後、山で疲れ果て、周一が意識を無くすように眠りについた次の日のことである。
周一が目を覚ますと、辺りには妙な形の石ころが転がり、オリオンは一回り大きくなっていた。オリオンは脱皮したのだ。少しだけ大きくなったオリオンはますます運動能力が向上した。何も、パワーアップしたのは周一だけではないのだ。
そのオリオンが、風の身体強化により周一の肩から弾丸めいて飛びかかる!ニックの首筋に当たる直前、オリオンの珠の色は青に染まる。水の身体強化に切り換え、本来の重量で直撃しようというのだ。オリオンは見事な動きでニックのうなじに突撃し、相手の意識を刈り取った。ニックは白目を向いて倒れた。周一は感心して叫ぶ。
「うおー!首をトンッてするやつじゃん!」
ほとんど一瞬で勝負がついたのであった。




