ハイキング(5)
瞬間、周一の全身にじんわりとした感触が流れ込む。それと同時に何か大切な記憶が…。
「っえぇい!」
周一は我に返って変な声を出しながら顔を放した。
「プレゼントだ。」
龍の女、ヨルンは言う。
「……。どんなプレゼントなんすか?」
「魔法適正を上げてやった。その子に感謝しなさい。」
魔法適正とは…?しかしその前に周一は知りたいことが山ほどある。
「魔法適正…。というか俺はあなたの名前すら知らない。なんで襲ってきたのかも分からない。話が通じるのなら色々聞きたいことがあります。」
「はぁ。ちょっと厚かましいんじゃない?勇者の付き人の分際で。
ま、名前なら教えてやろう。私はヨルン。毒龍よ。」
((なるほど毒龍か…。確かに毒吐きはうまい。))
「そうだ、聞きたいことがあるなら1つだけ答えるわ。?こんな具合ね……。
我から生き残った者よ。今、龍の叡智を授けん!」
((なるほど、曲がりなりにも試練を乗り越えた俺達への達成報酬といったところか。思ってたよりかは親しみやすいな…。
だがいい機会だ。質問は慎重に選ばないと。一番生き残るのに必要な情報は何か……ここはやはり…。))
「じゃあ聞きます。僕は魔力が身体能力を強化すると予想してますが、合っているならば各属性の魔力でどのような効果があるか教えて下さい。」
オリオンは静かに地面の岩を食んでいる。
((この質問だけで大まかに3つの事が分かる。1つはそもそも魔力が身体能力を強化するかどうか。これは恐らく合っているが、あくまで予想の域を出ない。確証があるかどうかは大きな差がある。
2つ目に魔法の種類だ。この質問に答えるためには、この世界に何種類の魔力があるか列挙するしかない聞き方をした。
3つ目は質問の答えそのもの。各属性の魔力がどう影響するのか。))
真剣な顔をして周一は聞く。だが、ヨルンは大笑いしていた。




