ハイキング(4)
((やった!やったぞ!))
命を奪われかけたことはともかく、周一は確信していた。
((遅い…!遅すぎた!異世界転生とヒロインは切っても切れぬ関係!俺強するためには守るべきヒロインの存在が必要!
…あれ?俺強くないし守るどころか今殺されかけたな…。))
人の形をとった龍は女性なのだ。紫に照り返す銀髪に、誰もが認めざるを得ない容姿。スラッとした印象で身長も周一に届きそうなくらい高い。
「ふむ…。なかなか良い度胸だ。実力差がありながらも決して諦めず私に向かってくる。
それこそ勇者にふさわしい気概!よくぞ試練を乗り越えた!どれ、近くにいらっしゃい。」
周一はよろよろと女性に向かう。
「私の、毒龍の加護をやろう。」
紫の穏やかな光が彼を包む。そして全身に吸い込まれるようにして消えた。こうして毒龍に認められ、加護を得たのだ。
オリオンが。
「えっ?……俺は?」
「ああ…あなたまだ居たの。あなたの何処が勇者なのよ。
ずっと逃げることしか考えてないし、仲間に助けられただけで自分は何もしてないし。」
「えっ…ああ…おう…。」
周一は何も言い返せなかった。
「それにあなたの魔力ってなんか汚いから嫌。汚らわしい。
少しは整理整頓しなさいよ。」
((お前は独り暮らしの大学生の家にアポ無し訪問するオカンか!))
「あと私の加護要らないじゃない。鎖が付いてる時点であなたは毒無効よ。つまり毒無効になる毒龍の加護は不要。」
「鎖のお陰だったか。なるほど毒無効は目茶苦茶助かるな。何でも食える…。」
「え?どうしても?しょうがないわねえ…。」
女性の会話相手はオリオンだ。
「オリオンと会話できるのか!」
「大サービスしてあげちゃうわよ。ほらこっち来なさい。」
周一の反応は無視されるも、こっち来なさいと言われれば行かざるを得ない。オリオンが頼んだことだろうし、機嫌を損ねたら殺されかねない。
「はい。どうぞ。」
周一は名も知らぬ女性にキスをされた。




