ハイキング(2)
翌朝、禿げ山の頂上にて。周一は天然の展望台から辺りを見回して、町らしきものを発見した。人里を見つけた今の周一は清々しいまでに心踊っていた。オリオンは夜番の疲れで寝ている。
やっと人間に会える。そういった興奮からだろうか。念のため祠の中も見ておこうと、祠の奥にある、闇に包まれた洞窟に足を踏み入れてしまったのは。
周一はオリオンを抱えて闇のなかを進む。入り口の壁に左手の鎖を打ち込んできたので、帰り道には困らない。どうやら洞窟は緩い下り坂になっているようだ。
はっきり言って現在の周一は、過酷な試練を乗り越え、町に行くという新たな目標を発見した、油断も隙もない旅人であった。
それゆえに、予想だにしない驚異に対しては油断を禁じえなかったのだ。
しばらく行くと、いつしか辺りの壁には紫に光る水晶が生えており、ある程度の視界を確保できる。これなら安心して進むことができる。オリオンが目を覚ました様だ。
「なんだオリオン。暗いところは怖いのか?震えるなんてらしくないな。寒いのか?」
オリオンは即座に周一の腕から飛び下り、今来た道を後戻りし始めた。
「そうか…。まあ、上で待っててくれ。すぐ戻る。」
周一はオリオンを見送りながら前へいくらか歩いた。
「え?」
しかし、最後の一歩はむなしく空を切り、ぽっかりと開いた縦穴へと周一は吸い込まれていった。




