叢場研究室・甲(2)
「さてと、まずはオリオン、お前に聞きたいことがある。」
オリオンは首をかしげた。
「まず青色になってくれ。」
オリオンの目と、体に埋め込まれたように付いている水晶のような珠は、色が変わる。その法則性について周一はすでに予想を付けていた。オリオンの珠の色は周一に言われた通り、青くぼんやりと光り始めた。
「よーしそのまま動かないでくれよ。よいしょ。お前、本当はこんなに重かったのか!」
オリオンは前足で器用に両目を隠している。恥ずかしいのだろうか。
「よし次は緑だ!……軽いっ!」
周一はオリオンをひょいと降ろす。
「オーケー。次は駆けっこだ。青のまま少し走って、緑になってから戻ってきてくれ。」
オリオンは言われた通り動く。彼は多少生意気だが非常に素直なのだ。
「はい。お疲れさん。やっぱり緑のほうが圧倒的に速い…。
よし、やはり魔力を身に纏うと身体機能や身体能力が変化すると考えて間違いは無いな。」
オリオンはまたしても首をかしげた。
「お前は知らずにやってたんだな。
あのニックとかいう男を見て分かったんだ。ものすごい速さで走るし、腕力も強かった。それに、自分の魔法が直撃したのにあまりダメージを負っていなかった。
明らかに普通の人間の動きじゃない。俺の知るかぎり、奴が普通の人間と違うのは、魔法が使えるところだ。」
「そして、オリオンが俺の上に乗ってるときは大体緑色だろ?
お前のそれは使う魔法によって色が変わるのは分かってるからな。緑は風、青は水だ。つまりお前は俺の上に乗ってるとき、風の場合が多い。」
オリオンは頷く。
「この2つと今の実験から考えるに、魔力は身体に少なからず影響を及ぼすはずだ。
例えば風の魔力は体が軽くなり、素早く動くことができる。はずだ。」
「俺は少なくとも今は水魔法しか使えてないから、水の魔力を持っていることは分かる。
でも水の魔力で身体がどうなってるかはよく分かんないんだよな。」
オリオンは首を振った。この場合は自分もわからないといったところだろう。
「まあ、何にせよ色々分かった。魔法については俺は素人だし、お前は本能なのか才能なのかでやってるから二人とも分からないのは仕方ない。」
「そして何となく行き先は決めたぞ。山だ。あっちにうっすらと山が見える。山に行って高いところから次の行き先を決めよう!」
オリオンはぴょこんと周一の頭に飛び乗った。彼らの旅は、まだ始まったばかりだ。




