森の先にて(2)
空を裂く音が周一の耳に入る。まずい!周一は瞬時に判断し辺りを見渡す。今の音はオリオンが風の魔法で攻撃した音に他ならないからだ。
続いてポトリと木の枝が下に落ちる音がした。何かが高速でこちらに近づく音もだ。突如、突風が吹いて周一の体は立っていた木の枝から離れる。その直後、何者かが周一の居た場所に突っ込んでくる!
「おおおっ!」
周一は手に持った鎖をうち振る!鎖は超自然の力によって伸び、近くの木の枝に巻き付いて周一の落下を制止した。周一はこの2週間ほどで、鎖の能力を一部だが把握したのだ。
数日前、手の届かないところにある毒キノコを採ろうとして、面倒に思ったから鎖を振っていたところ、伸びた。なんともマヌケなきっかけだが、ともかく周一の意思に応じてある程度伸ばしたり動かしたりできるのだ。今回もこうして難を逃れた。
かに思えたが、先ほど周一の居た木の枝にはマントヒヒを10倍恐ろしくしたような顔のサル型モンスターが立ち、怒りの形相でこちらを睨み付けている!
サルはこれでもかというほど発達した上腕で木の幹を抉り取り、こちらへ投げつけてくる。しかしそれはオリオンの風魔法によって打ち落とされる。
「テリトリーに入っちまったか…。オリオン、とっておきの準備を頼む!」
飛び道具が通用しないことを悟ったサルは飛び上がり、木の枝を飛び渡って恐ろしい速さでこちらへ近づいてくる!サルには足がなく、背中のコブのように大きい広背筋からするに腕のみで樹上生活をしているのであろう。丸い毛玉からものすごい形相の顔と馬鹿みたいに太い腕が生えたような奇っ怪な化け物だ。
周一は鎖を伸ばし、片端を木の枝に巻き付け、もう片端を鞭のように振るう。しかしこれは牽制にしかならない。近づかれたら木の幹を蹴って飛び、ターザンの要領で別の枝に鎖を巻き付けて移動し、距離を取る。
何度かこの攻防を繰り返すも、サルの方が圧倒的に有利だった。木々を飛び渡る動作で、人間と猿、どちらのスタミナが優れているかは明白だ。このままじり貧で追い込まれてやられるわけにはいかない!




