旅に行く
{そっか・・・。見えてないなら、芽以に旅してもらうことはできないね。急にごめんね。じゃあね}
ちょっと待ってよ!私は、どうやって元の世界に戻ればいいの?
{・・・悪いけど、私は知らない。私はただ、この世界に来た人と旅をしろって言われただけなの。たぶん、旅が終わったら、神が元の世界に戻してくれる、とかだと思う・・・。}
そんな!・・・。じゃあ、私、旅する!
{えっ!私のこと、見えないんでしょ?どうするつもり?}
声は聞こえるわけだし、何とかなるって!
私、こういう時だけポジティブなんだ!!
{でも・・・}
いいから!行こ!
{・・・。うん!}
「由加里、まずは、どこに行くの?」
目的地がはっきりしていないと、旅をするにしても動きようがない。
{えっと、人間界って、この<地球>って星だけなんだよね?}
「うん」
{よいしょっと}
大きな地球儀がどこからか出てくる。
{じゃあ、ここは?}
由加里が控えめに指差すそこは
「北アメリカ大陸」だよね?
{来た雨理科たいりく?}
「北にある、アメリカ大陸!雨と理科が来たたいりくってなに!?」
小学一年生でも、そういう解釈はしないよ。
・・・。いま、指、見えたよね?
私は指が見えたところをもう一度見てみた。
ある、やっぱりある!
色白の細い指。うすいピンク色のマニキュア。
ちゃんと細い腕がついていて、その次にかたがあって、顔がある。
小っちゃい手のひらサイズの身長で、全体的に色は白。小顔で整った顔立ち。正直言ってめちゃくちゃかわいい。
「由加里って、超可愛いね」
{見えるの!?}
「なんか、見えた」
由加里の顔が、すっごい笑顔になった。
{やった~}
うれしそう。
{って、喜んでる場合じゃない!この線なあに?}
また地球儀を指差す由加里の声は、さっきよりもテンションが高い。
「これは、国境っていうの。国と国の境目だよ」
{ふーん。じゃあ、このくにに行きたい!}
「えっ」