木藤翔汰と私のモットー
「もうずいぶん暗くなってきたな~」
私は、ゆっくりと山をおりることにした。
扉はさすがに気にはなったけど、あんな扉、在っても意味ないよね?
開いたって向こう側に続いてるだけだろうし・・・。
山の中腹まできたとき、何故かどんどんあの扉のことが気になりだした。
何となく考えてしまう。
まるで木藤翔汰の事を考えている時のようなもやもやしたこの感じ。
何が、とははっきりしていないけど、しっかり向き合ってみないとすっきりしそうにない。
「もっかい登るか」
<変にもやもやしてるなんて気持ち悪い!>私のモットー的なもの。
木藤翔汰のこと以外は全てはっきりさせてきた。こんなことくらいでもやもやしてるなんてイヤになるけど、これはもう、私の性格上仕方無い!
よし!さっさと登ろう。
少しどきどきしながら、キレイなドアノブに手をかける。
「いくぞ!」
変に気合いを入れてドアノブを回した。
するとそこには!!
特に何も起こらない。普通に向こう側が見えるだけ。
「<するとそこには!!>なんて一人で盛り上がってた自分がバカみたいに思える」
・・・。「うっわー」
今思い返すとめちゃくちゃ恥ずかしい!
で、でも、終わったことは仕方がないんだし。
誰か見てたわけでもないし。
{あなた、榊原芽以?}
・・・。
皆さん私、大丈夫でしょうか。
なにやらおかしいほどきれいな声が私に話しかけてくる、という幻聴が・・・。
{酷いわね。あたくしの声が幻聴だなんて。それより、質問に答えなさいよ。あなたは、榊原芽以で間違いない?}
まあ、間違いないです。
{それならいいわ。ボーッと突っ立ってないで、まずは扉をしめてちょうだい}
・・・。誰、何、何なの!?
戸惑いつつも、私は扉を閉めた。
すると、突然扉が輝きだした。
という表現は実際には間違っているかもしれない。
正確には、扉の奥で何かが光り輝いていて、その光が、外まで漏れているようだった。
黄色とも白とも言えないとてもまぶしい光が、暗くなり始めていた世界を照らす。
私はじっとしていられず、光が消えたとたんに扉を開き倒れるように中へ入った。